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今もっとも注目を集める「オフグリッド・ハウス」とは?2023.02.06

今もっとも注目を集める「オフグリッド・ハウス」とは?

このコラムでも昨年末にご紹介した、スマートハウス。家庭内でエネルギーを作る・ためる・使用することで、クリーンエネルギーを有効活用。光熱費を極力まで抑え、地球環境にも優しい“これからの住宅の形”として、広く浸透しつつあります(参照:「今さら聞けないスマートハウスやZEHって?」)。オフグリッド・ハウスは、そのスマートハウスをさらに発展させた試みとして、今、大きな注目を集めている住居システムです。そのシンプルでありながら大胆な発想と取り組みは、日々の暮らしのみならず、住宅という考え方をも大きく変化させる可能性があります。

スマートハウスとオフグリッド、どこが違うの?

スマートハウスとは、ITを活用し、太陽光などのクリーンエネルギーを効率よく活用するシステムを持った住宅を指します。日中に太陽光などで電気を作り、蓄電池に蓄えます。電気の使用量が多い時間帯/少ない時間帯を把握しながら、蓄えた電力を最大限に有効活用することで、電力会社からの電力購入を極力減らし、電気の自給自足を目指すことができます。
一方のオフグリッドは、電力会社の送電線に繋がっていない状態を意味します。つまり、電力会社に頼ることなく完全に電力を自給自足している状態です。「グリッド(Grid)」とは電線・電柱などで張り巡らされた送電網を意味します。そこからオフ、切り離された状態の家がオフグリッド・ハウスです。

スマートハウスの接続例

オフグリッドの接続例

オフグリッドは電力会社に頼らず、太陽光発電などクリーンエネルギーを使用することで電力を供給します。地球環境に優しいシステムであることはもちろん、自然エネルギーのみを電力源とするため、どんな環境でも電力を確保できる、という画期的なメリットがあります。極端な例えをすれば、電力網が整備されていなくても、好きな土地、場所で暮らすことも出来るようになるわけです。

オフグリッド・ハウスはいいことづくめ?それとも?

オフグリッド・ハウスはいいことづくめ?それとも?

オフグリッド・ハウスの魅力は、やはりなんと言っても地球環境に配慮した暮らしが実現する、という点でしょう。現在、電力会社で発電する際に使用されているエネルギー源のほとんどは、石油や石炭、液化天然ガスなどの、地球温暖化の原因となるCO2排出量が多い化石燃料です。また、発電所でつくられる電気は大量かつ容量が大きいため、家庭用に小さくしてから送電する、という手間がかかります。さらに、送電中にも電気抵抗や熱に変化することで、電気は徐々に減りながら各家庭や施設へと送られています。こうした電気のロスは、日本での全発電量の約5%、1年間で約458.07億kWhにものぼると計算されています。そういった電力をめぐる様々な問題・課題を考えていくと、電力会社から電気供給を受けず、自然エネルギーで暮らすオフグリット・ハウスに住んでみたい!と考える方は決して少なくないはずです。
一方、オフグリッドには2つの課題があります。1つ目は、太陽光発電+蓄電システムでの電力が尽きてしまった場合、電力無しの生活を余儀なくされること。2つ目は、電力会社に頼ることなく安全に電気を利用するための独自のメンテナンスが必要になる、ということです。比較的サイズの大きな蓄電装置を敷地内に設置した上、安全に電気が使える状態かどうかを電力会社と協議、許可を得る必要もあります。既存のインフラを使用せず、住宅内で完結させる必要があるため、おのずと様々な設備は必要となりコストがかかる、という側面もあります。勿論、こういった設備面での課題は、技術の開発と共に解消されていく可能性は高いでしょう。例えば、電気自動車は、太陽光発電をたっぷりと充電しておくために必要不可欠な大型蓄電池としての役割も兼ねることができます。電気自動車のさらなる普及、導入は、オフグリッドに向けた課題に対する一つの解決法とも言えるでしょう。

無理のなくエコな暮らしを実現する「セミオフグリット」とは?

オフグリットとはある意味、電力会社との決別とも言えます。これはなかなか勇気がいる決断であることは間違いありません。天候に左右される自然エネルギーの安定供給の難しさも気になります。天候不良や災害で停電してしまったら? ライフステージの変化を考えるとオフグリッドへの完全移行は難しいかも? そんな不安を感じるのは当然かもしれません。

無理のなくエコな暮らしを実現する「セミオフグリット」とは?

そんな方におすすめなのが「セミオフグリッド」です。オフグリッドの構造を基本に、太陽光発電で電気を自給自足しますが、万が一蓄電池の残量が無くなった場合に備えて、電力会社との契約は結んでおく、という考え方です。緊急時のみ電力会社から電力を供給してもらう、というリスクマネージメントをしておくことで、安心してオフグリッド・ハウスで暮らすことができます。また、自宅で消費しきれなかった太陽光発電を系統に送って売電することも可能です。オフグリッドに完全移行せず、できる範囲で地球に優しい生活を実践する。緊急時や有事の際には、既存のインフラを活用する。この「無理をしない」というバランスこそ、理想的なエコライフの重要なポイントと言えるのではないでしょうか。

自然のエネルギーを活用し、自然と共存する未来へ

自然のエネルギーを活用し、自然と共存する未来へ

地球温暖化など国際的に環境問題への意識が高まるなか、日本は2020年に「カーボンニュートラル宣言」を表明しました。2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す、という指針を表明しています(参照:簡単解説!“GX”って知っていますか?)。世界各国で様々なエネルギー問題への対策が進む中、自然エネルギーを最大限に活かすオフグリッドは、Co2を排出しない生活様式として、世界中で注目されています。
また、施設ごとに電力や水道などのインフラを簡潔させるというオフグリッド技術は、住宅に限らず、より大きな規模での活用も想定できます。例えば、災害などの有事の際、体育館や工場など通常では居住を想定していない施設でも、オフグリッド技術を応用することで、避難施設や仮設住宅として利用することも可能になります。また、これまでインフラ整備の難しい自然保護地区や景勝地などでも、環境への影響を最小限に抑えた宿泊/観光施設が建築可能となり、地方経済の活性化への期待にも繋がります。

カーボンニュートラルに向けた新しいライフスタイルが求められる現代。太陽光発電や蓄電システムの進化によって、様々な形でのオフグリッドの導入が進みつつあります。都市や地方、戸建てや集合住宅など、環境の違いがあっても、オフグリッドを始められる時代が、もうすぐ目の前にやってきています。
自然エネルギーを活用する社会システムの構築と共に、自然と共存していくライフスタイルを実現していく――。私たちニチコンは蓄電システムをはじめ、さまざまなエネルギー活用技術の開発と、一歩未来を見据えた提案で、皆さまの「これから」に貢献していきます。

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