簡単解説!“GX”って、知っていますか?2022.12.27
「GX=グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)」という言葉を聞いたことはありますか?経済産業省が推進する取り組みの一つで、GXの目的は、気候変動が懸念されている地球環境の保護を目指し、持続可能な社会作りやカーボンニュートラル(脱炭素)を実現すること。そして、同時に経済社会システムの変革を行うことにあります。
このGXが日本でも注目されるようになった背景には、政府による二つの大きな方針決定がありました。
2050年カーボンニュートラル宣言
2020年、当時の菅義偉首相が、温室効果ガスの排出量と吸収量の差をゼロにするカーボンニュートラルの実現を2050年までに目指すことを宣言しました。また、同年、経済産業省は〈2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略〉を発表。太陽光発電などのクリーンエネルギー導入・拡大ともに、自動車・蓄電池事業をはじめ、半導体・情報通信や船舶、次世代熱エネルギー、住宅・建築物・次世代電力マネジメント、物流・人流など成長が期待される14の重要分野でCO2排出量削減の実行計画を掲げました。
“新しい資本主義”の鍵=GX
2022年6月には、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定されました。この中で政府は“新しい資本主義”の投資分野として「①人への投資と分配」「②科学技術・イノベーション」「③スタートアップ・オープンイノベーション」「④GX・DX(デジタルトランスフォーメーション)」を発表しました。
この4本の“柱”にGXが含まれている理由は、大きく3つ挙げることができます。一つめは、日本のカーボンニュートラル技術の高さと、今後の更なる可能性をしっかりと世界に示す重要性です。事実、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と呼ばれる、気候変動の影響を想定した各企業の具体的な戦略・取組みの開示を推奨する国際機関へは、世界の中でも日本の企業がもっとも多く参加しています。こういった、積極的な姿勢世界にきちんとアピールすることを目的としています。そして2つめは、これまで主に欧州主導で行われてきた、カーボンニュートラルやクリーンエネルギーの導入制度の制定を、より日本の状況に最適化したものへと見直すべく、官民連帯でのルール作りの能力を高めていくためです。そして最後が、日本から世界に対しての新たなGX市場の創造・提案を積極的に行っていくこと。カーボンニュートラルやクリーンエネルギーシステム活用の高い技術を持つ日本が、率先してGXを牽引していくことで、新規市場を獲得し、経済活動の活性化に繋げていこうという目標です。特に近年では、技術開発の躍進により太陽光発電などのクリーンエネルギーシステム導入のコストは大きく下がっています。これを機に、大規模な工場や施設を持つ企業でも、GXに関連する行動が実現可能となってきました。これも、今こそGX推進を、という流れを大きく後押ししていると言えるでしょう。
具体的な未来に取り組む、GXリーグ
この2050年カーボンニュートラル(脱炭素)の実現に向け、企業群が行政や大学・研究機関、金融機関などと共に具体的な行動や計画について積極的に議論を行うために組織されたのがGXリーグです。2022年12月の時点で、すでに599社の企業が賛同しています。
GXの推進には、各企業が排出量の削減の高い目標を掲げるとともに、目標達成のための素早い移行、ビジネススタイルの変革が必要とされます。このGXリーグのもっとも重要な目標は「経済社会システム全体の変革」の実現です。企業意識や事業活動を刷新し、新しい市場を開拓、創り出すことで、私たち生活者に受け入れられ、またそれが企業にとっての新しい意識・事業活動へと繋がる、という循環型の構造によって変革は実現する、という構想です。つまり、より未来を見据えた形で企業の成長を促し、私たちの生活の質の向上と、地球環境を守り改善するという、全方向的な貢献を目指しているのです。
国内企業の具体的なGX事例とは?
ある自動車メーカーでは、EVの技術開発と生産技術の革新に力を入れています。2030年以降は生産する新型車をすべてEVに切り替え、将来的にはEVのみを販売することを目標に掲げています。これを実現することで、グローバル新車の平均二酸化炭素排出量を2010年比で90%削減することを目指します。もちろん、EVは再生可能エネルギーを利用して稼働するだけでなく、蓄電池(バッテリー)としても利用できるため、エネルギー利用の新しい可能性を担う重要な存在でもあります。
建築分野では、オフィスビルのZEB化(ネットゼロエネルギービル)や、大規模な太陽光発電、バイオマス発電への取り組みも行われています。電気通信会社では、再生可能エネルギーへの積極的な投資により、2030年までに電力消費量のうち約半分を再生可能エネルギーでまかなうことを目標に掲げているほか、災害への備えとして、全国に7,000か所以上ある通信施設内に大型蓄電池を設置、社用車のEV化も予定しています。
GXから見えてくる地球環境と暮らしの“未来のカタチ”
現在、世界中で異常気象による洪水や干ばつなどの自然災害が増加しています。特に、ここ30年間においては気温の上昇傾向が強まっており、2100年までには3.3~3.5℃もの気温上昇が予測されています。この急激な変化は当然、異常気象や自然災害のさらなる拡大、気候変動による食糧問題や難民の増加、貧困問題などの要因となると同時に、私たちの日常生活の在り方そのものが困難になる可能性も含んでいます。国と企業が同じビジョンを共有し、環境問題への対策を行いながら、それを同時にビジネスにも活かすことで、経済の発展に繋げていく――GXは “未来のカタチ”を創造するためのプロジェクトと言えるかもしれません。
経産省は、カーボンニュートラルを実現するために、官民で150兆円の投資を呼び込むための規制・制度を立案し、支援策を講じていくためにGXイニシアティブの策定を行っています。もちろん、その中には太陽光発電や蓄電システムの普及拡大も重要な政策として検討されています。
私たちニチコン株式会社も、GXリーグの賛同企業に登録しています。現在、家庭用蓄電システムでは累計販売数No.1を誇るニチコンですが、その事業分野は、産業用蓄電システム、V2Hシステム(シェア90%以上、累積販売台数No.1)、EV用急速充電池の開発・普及拡大の推進など多岐に渡ります。また、そのすべてがGXの掲げるカーボンニュートラル、太陽光発電などのクリーンエネルギーの活用分野において、重要な技術開発であることは言うまでもありません。ご家庭での日々の暮らしのお手伝いから、企業の新しい取り組み、地域/自治体の発展、日本社会での新たな市場の創造・拡大に至るまで、ニチコンは蓄電システムを通し「ミライのカタチ」に貢献していきます。