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ウクライナ侵攻から1年…電力業界に与える影響は?2023.03.10

ウクライナ侵攻から1年…電力業界に与える影響は?

2022年2月に始まった、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。1年が経った今もなお、和平の糸口は見えていません。ウクライナ侵攻を止めないロシアへの経済制裁に対して、ロシアはエネルギー輸出削減という形で反発をしています。いわゆる「ロシアによるエネルギーの武器化」は、確実に世界各国に大きな打撃を与えています。まさに激動の1年を通して、電力、エネルギーの世界情勢はどのように変化したのでしょうか? そして、私たちの生活に与える影響とはどんなものなのか、改めて考えてみましょう。

ロシアへの制裁が起こした、エネルギー市場の揺らぎと混乱

ロシアと言えば、世界一大きな国。約1710万㎢の国土面積は、地球上の陸地の11%以上、居住地域では8分の1を占めるという、まさに大国です。そして、世界でも有数のエネルギー大国でもあります。2021年時点では石油が年間輸出量の約12%、ガス・LNG(液化天然ガス)では24%と、世界シェア1位。石炭でも全体の18%を占め世界第3位と、まさにエネルギーにおける世界最大の輸出国でした。

2021年後半には、コロナ2019(新型コロナウイルス)のパンデミックの影響下にあった各国も、緩やかながら経済活動を再開します。これによりおのずと社会全体のエネルギー消費が増え、エネルギー価格は上昇傾向にありました。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、G7を始めとする各国は、ロシアに対し、ロシア産エネルギー資源に輸入制限を課すといった制裁措置を講じることを決定します。これまで大きく依存していたロシアからのエネルギー供給が不安定になったことで、エネルギー価格は軒並み上昇してしまい、電気料金の上昇/値上げという形で、自分たち自身を苦しめる結果にもなってしまいました。

G7各国の一次エネルギー自給率とロシアへの依存度 G7各国の一次エネルギー自給率とロシアへの依存度 参照)経済産業省資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーにおける年次報告(エネルギー白書)

もちろん、ここまでのエネルギー高騰は戦争や政治的な動きだけが原因とは言い切れません。ウクライナ周辺で実際に武力衝突が起こる中、ヨーロッパ向けのエネルギー輸出インフラに損傷が発生するといった事態も起きています。また、ロシアが自ら他の国へのエネルギー輸出を削減・停止することも、世界のエネルギー市場に大きな不安をもたらしていると言えるでしょう。

エネルギーの莫大な消費と気候変動への影響

エネルギーの莫大な消費と気候変動への影響

ウクライナ侵攻という「戦争」そのものも、莫大なエネルギーを消費しています。上空を飛び交う戦闘機や、大地を揺らして走る戦車は、私たちの日常生活とは桁違いの燃料を大量に燃やしています。昨年10月、エジプトで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締結国会議(COP27)でも、ロシアによるウクライナ侵攻が人だけでなく、地球環境にも大きなダメージを与えていることが指摘されました。ディーゼルエンジンの戦車や戦闘機、ミサイルの発射、都市や森林の火災、避難民の移動まで、この紛争にともなって大量の温室効果ガスが排出されています。ウクライナ政府の専門家を含む国際研究チームは、侵攻が始まった2022年2月から約7か月間の間にCO2換算で少なくとも1億トンもの温室効果ガスが排出されたと分析。一方、アメリカ航空宇宙局(NASA)でも、2022年の地球の平均表面温度は、過去5番目に高かった2015年の水準に引き戻されたと発表しました。世界各国が足並みを揃え、脱炭素化に取り組む必要に迫られている、重要な時代に、「戦争」はそれに歯止めをかけ、気候変動などにも大きな影響を及ぼしています。

日本に暮らす私たちへの影響は?電気料金はどうなる?

日本に暮らす私たちへの影響は?電気料金はどうなる?

エネルギー供給の不安定、不安による燃料価格の高騰は、当然、私たちの生活にも直撃しています。すでに、電気代の値上がりは以前から続いていましたが、先月には電力会社5社が4月から電気料金を大幅に値上げするというニュースが大きく報じられました。電気需要供給のひっ迫と、実際的な電気料金の値上がりは誰もが実感しているのではないでしょうか。当然、エネルギー価格の値上がりは企業や生産者のコストの負荷を上げ、それは、物価高、値上げとなって私たちの暮らしに影響を与えることになります。
残念ながら、このコラムが書かれている2023年3月1日現在では、まだウクライナ侵攻が終結する見通しはありません。国際エネルギー機関(IEA)によると、今年、世界の石油需要は3年ぶりに過去最高を更新すると予測されています。需要増加の約半分は中国が牽引すると考えられ、一方、中東産油国やロシアの大規模削減は継続するなど、供給不足は続く見通しです。

電気を「買う」のではなく「作る」

やはりここでしっかりと考えたいのは、電気を「買う」のではなく「作る」、再生可能エネルギーの未来です。自国で作るエネルギーを、自国で生産する。欧米ではすでに具体的な取り組みが次々と進められています。日本でも政府が閣議決定したGX(簡単解説!“GX”って知っていますか?)には、太陽光発電をはじめ、水素、アンモニア、CCUS(CO2の回収・貯留・有効利用)など様々な案が盛り込まれています。
それはもちろん、私たちの生活にも大きく関わってきます。電力、エネルギーに対する意識そのものへの変化が求められている時代、とも言えるかもしれません。

エネルギーを作る。作ったエネルギーを無駄なく使う。そのためには、かならず蓄電システムが必要となります。クリーンなエネルギーを貯め、無駄なく、大切に活用する。このシンプルで、美しいエネルギーの循環システムが、未来の「当たり前」になる日は、決して遠くないはずです。
一人ひとりがエネルギーの在り方について、しっかりと考え、しっかりと備える。ニチコンは多様な蓄電システムのご提案を通して、皆さまの毎日に、そして、未来の地球へと貢献を続けていきます。

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