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再生可能エネルギーの歴史2022.8.30

再生可能エネルギーの歴史

1970年代に始まった“サンシャイン計画”

再生可能エネルギー(Renewable Energy)とは石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、太陽光や風力、地熱といった自然界に常に存在するエネルギーを指します。その大きな特徴は「枯渇しない」「どこにでも存在する」「CO₂を排出しない(増加させない)」という3つのポイントです。エネルギー確保や地球環境保護の観点から、近年特に開発が進んでいるような印象がありますが、実はその歴史は長く、日本では1973年、オイルショックを機に始まったと言われています。エネルギーを中東の石油に依存していた日本では大きな混乱が起き、安定的なエネルギーが求められるようになったのです。
この年、通商産業省(現・経済産業省)は新エネルギー技術研究開発計画(通称・サンシャイン計画)を打ち出しました。枯渇しないクリーンなエネルギーの活用技術を開発するという目標を掲げたもので、太陽光発電、地熱発電、水素エネルギー、石炭の液化・ガス化を中心としたエネルギー技術開発を行う計画でした。この時に特に注目され、積極的に開発が行われたのは地熱発電、そして太陽光発電の技術開発です。ここから、より低価格で、大量生産が可能な太陽光発電システムの実現に向けての研究開発が大きく進歩します。

日本における太陽光発電の歴史

日本における太陽光発電の歴史

サンシャイン計画が始まった当時の太陽電池製造コストは、1Wあたり数万円という非常に高いものでした。そこでサンシャイン計画では、100分の1以下の価格、1Wあたり100円まで低下させることを目標に据えました。当時の主要な素材であった結晶シリコンはもちろん、大幅なコストダウンが可能となるアモルファスシリコン太陽電池など、さまざまな種類の太陽電池に関する原材料や構造、量産技術などの研究が進められました。
一般住宅向けの太陽光発電が日本で最初に発売されたのは、今からおよそ30年前――1993年と言われています。しかし、発売当時の値段はまだ非常に高く、普及推進融資制度を用いたとしても、なかなか気軽に導入できるものではありませんでした。

太陽光発電の現状と今後の政策の方向性 (p.1)|経済産業省 ※出典:太陽光発電の現状と今後の政策の方向性 (p.1)|経済産業省

上のグラフからも分かるように、1993年当時の住宅用太陽光発電の価格はなんと370万円/kW!全国平均の設置容量である4kWの太陽光発電システムであれば1480万円と、およそ一般家庭が気軽に導入できるものではありませんでした。翌1994年からは新たに補助金制度がスタートしますが、それでもまだ200万円/kWと、価格面でのハードルは依然高いものでした。
一般家庭での導入事例が少ないため、「本当に太陽光で発電するの?」「すぐに壊れるのでは?」などといった不安の声も多く聞かれました。しかし、そのような状況の中でも地球環境の問題に対する意識や、将来性への期待から導入する家庭は少しずつ、確実に増えていきました。
2009年には余剰電力買取制度がスタートし、さらなる普及支援が広がります。これ以前は、太陽光で発電した電気は、買電価格と同じ金額で電力会社が買い取っていました。しかし余剰電力買取制度により、買電価格よりも高く売電できるようになったことで、「太陽光発電を設置すると、経済的なメリットがある」という認識が一気に拡がります。

太陽光発電システムと東日本大震災

そうした流れの中、太陽光発電の可能性と価値が改めて世間一般に認識されたのが、2011年の東日本大震災です。東京電力福島第一原子力発電所の事故や計画停電をきっかけに、太陽光発電のもつ自家発電の価値が改めて認識されるようになりました。電力/電気とは、電力会社から買い、消費するだけではなく、日常的に自分たちで生み出し、使い、蓄えるもの――この大震災を機に、「生活とエネルギー」に対する考え方が大きく変わったと言えるでしょう。

そして、2012年、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(通称・FIT制度)がスタート。地球温暖化対策・再生可能エネルギーの普及・環境汚染の低減といった問題への意識の高まりと共に、一般家庭の太陽光発電システムの普及が一気に加速しました。

2020年代は新たな「家産家消」時代へ

2020年代は新たな「家産家消」時代へ

これからの未来のために、これからはさらなる太陽光発電を中心としたさらなる再生可能エネルギー普及がカギとなってきます。実際、東京を始め、全国の自治体などでは新築住宅太陽光パネル義務化の動きも始まっています(コラム『「新築住宅太陽光パネル義務化」って本当?』。しかし再生可能エネルギー普及の大きな課題として挙げられるのが安定供給の難しさです。太陽光や風力発電は、どうしても天候により左右されてしまいます。発電量と電力消費がしっかりと予測できてこそ、安定した電力需給に繋がります。そこで、大きく役立つのが蓄電池を使った電力調整機能を備えたシステムです。
近年注目されている「VPP」という言葉をご存知でしょうか。一般家庭の蓄電池をはじめとして、ビルや工場、大型商業施設の自家発電設備や燃料電池など、街にはたくさんのエネルギーリソースがあふれていますよね。これらをIoTを活用して集約し、遠隔で統合管理することで、1つの大きな発電所のように機能させる仕組みをVirtual Power Plant(仮想発電所)と呼びます。電力の需給バランス調整に活用することができるこの仕組みについて現在もさまざまな試みが広がっており、今後さらに普及が進むと見られます。
新たな仕組みに向けて社会が動き出している中、私たちは蓄電システムを備えることでより手軽に、確実にエネルギーを有効に利用することができるようになります。

蓄電システムとは「電気の貯金箱」と言えます。例えば、昼間は太陽光で作った電気で家庭内の電力負荷をまかない、さらに余った電力は蓄電システムにストックしておくことで夜間に使用することが可能です。地震・台風・豪雨など自然災害の多い日本では、停電することも少なくありません。突然の停電により電気が失われると、暮らしが不便になるだけでなく、PCや携帯といった連絡手段までも失ってしまう可能性があります。いつまで続くかわからない停電時に備え、蓄電システムがあれば安心です。
また、ニチコンの「トライブリッド蓄電システム®」は、自宅の電気はもちろん、電気自動車やPHVとも組み合わせられます。太陽光発電でつくった電気で、自宅や電気自動車の電気をほとんどまかなう「家産家消」のライフスタイルが実現します。
地球に優しいエネルギーを、誰もが作り使う時代へ――ニチコンはより質の高い蓄電技術で、新しい未来を応援しています。

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