なぜ、置くだけで充電できる?
ワイヤレス充電のしくみとは?2026.09.01

ケーブルレスでスマートフォンなどを充電できるワイヤレス充電。すでに、利用されている方も多いかもしれません。スマートフォンやスマートウォッチ、Bluetoothイヤホンなど、充電が必要な機器が増えるなか、置くだけで充電できるワイヤレス充電は大変便利です。でも、どうして置くだけで充電できるのでしょうか。意外と知られていないワイヤレス充電のしくみと、メリット・デメリットについてもご紹介します。
なぜ、ケーブルなしで充電できるの?
ケーブルでつながずに置くだけで充電できる。考えてみればちょっと不思議なしくみです。いったいどんな技術が使われているのでしょうか。現在、最も普及しているスマートフォン用のワイヤレス充電を例に紹介しましょう。
スマートフォンのワイヤレス充電は、電磁誘導方式というしくみが採用されています。電磁誘導というと難しそうなイメージですが、その原理は比較的簡単で、ほとんどのみなさんは、中学校の理科で、電磁誘導の実験をしているはずです。銅線を輪のように巻いたコイルの中に、棒磁石を出し入れすることで、コイルに電流が流れるようすを観察する下図のような実験を覚えていないでしょうか。
電磁誘導とは、コイルのまわりの磁界が変化することでコイルに電気が流れる現象です。磁界とは磁石から発生する力のようなものです。磁石を動かすと磁界も変化するので、コイルに電圧が発生し電流が流れます。逆に、コイルに電流を流しても、周囲に磁界が発生します。スマートフォンのワイヤレス充電はこのしくみを利用しています。
右下の「ワイヤレス充電のしくみ」という図を見てください。電磁誘導のしくみを利用するためにワイヤレス充電器と、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンにはコイルが内蔵されています。電源を入れると、充電器のコイルに電流が流れて磁界が発生し、この影響を受けて、スマートフォンのコイルに電気が流れ、充電ができるのです。
もう少し詳しく説明すると、充電器ではコイルに交流電流を流すことで、向きや強さが周期的に変化する磁界を発生させています。そのため、理科の実験のように棒磁石を出し入れしなくても、充電器の上に置くだけでスマートフォンのコイルに電気が流れ、充電できるのです。
ワイヤレス充電のメリットとデメリット
ワイヤレス充電のメリットについて改めて整理してみましょう。まずは、充電のたびにケーブルを抜き差しする手間がなく、置くだけで充電できる使いやすさが最大のメリットでしょう。日常的に行うことなので、一度ワイヤレス充電に慣れると、ケーブルで充電するのが面倒になるほどです。さらに、ケーブルの抜き差しがなくなると、スマートフォンの充電端子の摩耗や接触不良を抑えることができます。みなさんも経験があるかもしれませんが、スマートフォンは充電端子のトラブルで充電ができなくなることがあります。ワイヤレス充電にすればこうした不安はなくなります。
また、USB Type-CやLightningなど、充電端子が異なる製品でも同じ充電器で充電できるのも便利です。
一方で、ワイヤレス充電にはいくつかデメリットもあります。ひとつは充電時間です。ワイヤレス充電は有線での充電に比べて電力の伝送効率が劣るので、充電に時間がかかります。急いでいるときはケーブルを使う人が多いようです。また、充電器にスマートフォンを置く位置を正確に合わせる必要があります。とくに平面のパットタイプの場合は、位置がずれているとさらに充電に時間がかかってしまいます。スタンドタイプやマグネットでスマートフォンに密着するタイプの充電器は、その心配は不要です。
また、スマホケースや金属製のアクセサリーを装着していると、充電速度が低下したり、充電できなかったりすることがあります。厚手のスマホケースやカバーを付けている場合も注意が必要です。
ワイヤレス充電の上手な使い方とは
では、ワイヤレス充電を利用するにはどうしたらいいのでしょうか。最近は、ワイヤレス充電に対応するスマートフォンが増えていますので、メーカー純正のワイヤレス充電器を購入すれば、すぐにケーブルレスで充電が可能になります。ワイヤレス充電器には、スマートウォッチなど複数のデバイスを同時に充電できるものもあります。
また、純正品以外にも比較的安価なサードパーティ製のワイヤレス充電器が数多く販売されています。選ぶ際のポイントは次の通りです。
まず自分のスマートフォンが対応する規格と最大出力を確認しましょう。国際的な標準規格としてはQiとQi2があり、Qi2は磁石によってスマートフォンと充電器の位置を合わせてくれます。
また、ワイヤレス充電器の最大出力も大事なポイントです。スマートフォンは、機種によって「最大 15WのQiワイヤレス充電に対応」などと定められています。ワイヤレス充電器にも「充電出力15W」などと記載されていますので、スマートフォンと同等以上の充電器を購入しましょう。
充電器に使う電源アダプタも注意が必要です。ワイヤレス充電器は電源アダプタが別売の場合が多く、手持ちのアダプタを使うことになるでしょう。しかし、電源アダプタの出力が充電器の出力より小さいと、充電に時間がかかってしまいます。
iPhoneユーザーにはMagSafe対応品またはQi2認証品が適しています。MagSafeはApple独自の磁石式充電システムで、Qi2はそのしくみを取り入れた国際規格です。どちらもiPhoneと充電器が適切な位置に固定されるので効率的に充電ができます。
やがて、充電が不要な世の中になる
ワイヤレス充電のしくみには、現在スマートフォン用に普及している電磁誘導方式のほか、磁気共鳴方式があります。磁気共鳴方式の最大の特長は、送電側と受電側が離れていても電気が送れることで、これからのワイヤレス充電として注目されている技術です。
磁気共鳴方式はその名の通り、共鳴がポイントです。共鳴とは、物体が特定の周波数で強く振動する現象を指します。例えばブランコは、一定のタイミングで押すと次第に大きく揺らすことができますし、同じ音程の音叉を離して並べ、片方を叩いて音を出すともう片方も自然と鳴り始めます。こうした現象を共鳴といいます。
磁気共鳴方式は、この共鳴のしくみをワイヤレス充電に利用したものです。送電側のコイルに交流電流を流すと、周囲に一定のリズム(周波数)で変化する磁界が生まれます。そして、受電側のコイルを、この磁界のリズム(周波数)と共鳴するように設定しておくと、離れていても効率よく電力を受け取ることができます。また、電磁誘導方式に比べて位置ずれに強く、ひとつの送電装置から複数の受電デバイスに電力を分配することも可能です。
磁気共鳴方式は、工場や倉庫のロボット、EVなどへの活用が期待されていて、将来は、信号待ちや走行中でも道路から給電できるようになるかもしれません。
今後、ワイヤレス充電技術の進化によって、「充電する」という行為そのものが不要になるかもしれません。必要なときに、必要な場所で、自然に電気が届く――そんな未来が実現すれば、私たちの暮らしや移動は、今よりもっと自由で快適なものになっていくでしょう。
出典・参考文献
○AET ワイヤレス給電の磁界共鳴方式とは?注目される特徴とメリット・デメリットを解説
https://www.aetjapan.com/cst/column/details.php?046
○Rakuten Mobile ワイヤレス充電のメリット・デメリットは?基本から種類・選び方まで解説
https://network.mobile.rakuten.co.jp/sumakatsu/contents/articles/2025/00451/
○SANWA DIRECT ワイヤレス充電器の仕組みとは?規格やメリット・デメリットと選び方について解説 | 2026年版
https://direct.sanwa.co.jp/contents/sp/clm/wireless-charger/
