停電はなぜ起こる?
意外と知らない電力網のしくみ。2026.05.29

電気に支えられている毎日の暮らしのなかで、突然の停電は、生活も仕事も止まってしまう一大事です。台風や雷などで停電することもあれば、何の前触れもなく電気が止まってしまうこともあります。今回は、こうした停電がなぜ起こるのか、どうやって復旧しているのか、発電所から家庭までの電気の流れも含めてわかりやすく紹介しましょう。しくみを知っておけば、停電時の不安も少し解消されるかもしれません。
停電の主な原因は、送配電設備のトラブル
停電の理由で最も多いのは、電柱や電線などの送配電設備のトラブルです。落雷による変圧器の故障や、台風・暴風に伴う飛来物による電線の切断、大雪の重みによる電線同士の接触、地震による電柱の倒伏など、自然災害が原因となるケースが多くあります。そのほかにも、電柱への車両の衝突、近隣の火災や工事による影響、さらにはカラスなどが電柱に巣を作ったことによる停電もあります。カラスは巣の材料にハンガーや針金を使うため、これらが電線に接触すると停電につながってしまいます。
日本は、発電所と電力の需要地である都市部が離れているため長距離の送電を行っています。発電所から変電所を経て家庭まで、そのすべてが電線で結ばれているわけですから、どこで電線・電柱のトラブルが発生してもおかしくありません。
例えば、東京電力エリアでは、発電所と変電所を結ぶ送電線の総延長は約4万kmにおよび、これは地球一周分とほぼ同じ距離です。さらに、変電所から家庭などへ電気を送る電線も含めれば、その距離はもっと長くなります。これだけ長い設備を維持していることを考えると、停電を防ぐことがいかに難しいかがわかります。
停電には3つの種類がある
では、停電の復旧はどのように行われるのでしょうか。長い送電線の中から故障した場所を探すだけでも時間がかかりそうですが、初動は極めて速く行われます。
電力会社では、電力設備に設置された保護リレーと呼ばれる機器が異常を素早く検知し、遮断器によって事故のある区間を0.1秒以内に電力系統から切り離します。
これは事故の被害を広げないために極めて重要な措置です。送電線が切れてしまうと、地面や他の物体に触れて短絡(ショート)が起こり、通常よりもはるかに大きな電流が流れ、送電設備が損傷してしまうおそれがあります。こうした二次被害を防ぐためにまず電気を止めることが重要なのです。
その後、電気を止めた区間でエリアを限定して再び電気を送り、問題がなければさらにエリアを拡大していきます。停電原因のある場所に電気を送ると再び停電してしまうので、それで事故現場を絞り込みます。最終的には電力会社の社員が現地に出向いて電柱を一本一本確認し、問題のないエリアの電気を復旧させながら、迅速に修理を行います。
ちなみに、停電にもいくつかの種類があり、厳密には「瞬低」「瞬停」「停電」という3つの定義があります。
「瞬低」とは、「瞬時電圧低下」の略で、その名のとおり瞬間的(0.07〜2秒程度)に電圧が低下することです。落雷などによって部屋の電気が一瞬暗くなったり、パソコンが再起動した経験がある人もいると思いますが、それが「瞬低」です。
また「瞬停」は、「瞬時停電」の略で、落雷や設備事故などにより、ごく短時間だけ電気の供給が途切れる現象です。突然電気が止まると不安になりますが、多くの場合短時間で再送電が行われます。
そして、「停電」とは、再送電を行っても電圧が回復せず、原因を探して解決するまで特定の地域で電気が使えなくなってしまうことです。電力会社では1分以上電気の供給が止まった状態を「停電」と呼びます。
広域が一斉停電するブラックアウト
送電線のトラブルによる停電のほか、もうひとつ別の原因で発生する停電があります。それは、電力の需要が供給量を上回ってしまう場合に行われる計画停電と、最悪の停電とも言われる広域停電(ブラックアウト)です。
電気は、大量にためておくことが難しいため、電力会社は「いま使われている量」に合わせて、「いまつくる量」を調整しています。また、量だけでなく電気の周波数も常に一定に保たなければなりません。日本では、東日本が50Hz、西日本は60Hzと決められていて、この周波数は発電機のタービンの回転数によって調整されています。
火力発電所では、電力需要が増えるとより多くの燃料を燃やしてタービンを強い力で回しますが、発電能力には限界があります。限界を超えると回転数(周波数)を維持できなくなり、発電所や送電設備、さらに需要家である工場の大型機器などが壊れてしまうおそれがあります。こうした事態を避けるには、電力の需要を一時的に減らすしかありません。そこでやむを得ず、特定の地域を電力系統から切り離します。これが計画停電です。
過去の例では、東日本大震災の際、地震や津波で複数の発電所が被害を受けて電力供給力が大幅に低下したことから、東京電力管内で計画停電が行われました。また2018年には、北海道胆振東部地震によって主力の火力発電所が停止したことで、需要と供給のバランスが崩壊し、計画停電を行う余裕もなくブラックアウトが発生しました。
ブラックアウトは、発電所が連鎖的に停止してしまう深刻な事態です。北海道胆振東部地震では、道内の電力の約半分を供給していた苫東厚真火力発電所が停止したため、残された発電所に大きな負荷がかかり、設備を守るために相次いで緊急停止してしまいました。この結果、北海道のほぼ全域が一斉に停電してしまったのです。
近年でも2022年3月に、福島県沖地震による発電所の停止と季節外れの寒波による暖房需要の増加が重なったことから、大規模停電を避けるための「電力需給ひっ迫警報」が発令されました。このときは、企業や家庭が節電要請に協力したことで電力需要を抑え、計画停電を回避することができました。
日本の停電の少なさは世界トップクラス
停電は、暮らしや社会に大きな影響を及ぼすことから、停電を防ぐ取り組みが世界各国で行われています。なかでも日本は優秀で、世界でもトップクラスの停電の少なさを誇っています。
2024年度の日本全国における低圧電灯需要家1件あたりの年間停電回数は平均0.13回。停電時間の年間平均は24分でした。停電時間が24分と聞くと長いように感じるかもしれませんが、あくまでも平均値です。地震や台風、大雪、暴風雨など、自然災害が多い環境であるにもかかわらず、世界と比較しても安定した電力供給が実現されていると言えます。
これは、前述のように電線の異常箇所を素早く特定できるしくみを導入していることや、電力会社が送電網の巡視、点検、更新を継続的に行い、故障しそうな設備を早めに見つけて対処していることによるものです。
また、電力需要のひっ迫への対応としては、需要を賄える供給力の確保や、電力系統の監視・制御システムの強化、近隣の電力エリアと電気を融通し合う体制づくりも進んでいます。
普段何気なく使っている電気も、実はとても繊細なバランスの上に成り立っています。停電のしくみを知ると、電気を安定して届けることの難しさや、日々の備えの大切さが見えてきます。
家庭用蓄電池は、停電時に電気を使える安心をもたらすとともに、電力需要のピークを抑えることにも貢献できます。これから雷などによる停電が多くなる時期です。電気を上手にためて、賢く使う暮らしを考えてみませんか。
出典・参考文献
○電力広域的運営推進機関 「電気の質に関する報告書」2024年度実績
https://www.occto.or.jp/assets/houkokusho/2025/2025_nenjihoukokusho/denki_no_shitsu_2024_251203.pdf
○資源エネルギー庁 2024年度以降の電力需給運用 (電力ひっ迫警報等)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/2024jyukyu/index.html
○東京電力パワーグリッド 送電線設備
https://www.tepco.co.jp/pg/electricity-supply/operation/line.html?utm_source=chatgpt.com
○東京電力ホールディングス 停電時間の国際比較
https://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/electricity-supply/1253673_6280.html
