ソーラーパネルが道路に!?
“発電する道”がめざす未来とは。2026.04.30

太陽光発電パネルの上をクルマが走る――。そんな大胆な取り組みが、世界各国で始まっています。これまで、屋根や郊外の遊休地が中心だった太陽光発電を道路で行うことができれば、用地取得や景観問題を解決でき、電力消費地の近くで発電できるという大きなメリットも得られます。さらに、路面で発電ができれば、道路というインフラが劇的に進化する可能性もあります。気になる道路の未来をちょっと覗いてみましょう。
クルマが走っても壊れない太陽光発電のしくみとは?
クルマが走れる太陽光発電とは、一体どんな構造になっているのでしょうか。
発電のしくみ自体は、家庭用の太陽光発電とほとんど同じです。ただし、車両の重さや振動に耐えるため、太陽光発電モジュール全体の強度を大幅に高めています。表面は厚さ数センチの強化ガラスや樹脂素材で覆われ、外側はコンクリートや金属フレームでしっかりと固められます。また強化ガラスには、光を透過させながらタイヤのグリップを確保する滑り止め加工が施されているのも大きな特長です。
こうした太陽光発電モジュールは、施工や交換がしやすいようにユニット化されるのが一般的で、縦横が約1m、厚さ約10数センチのユニットをタイル状に道路に並べて施工していきます。
欧米ではすでに10年ほど前からさまざまな取り組みが行われ、先陣を切ったのは2014年に始まったオランダ・アムステルダムでの自転車専用道路(ソーラーロード)でした。オランダは国土が狭く、太陽光発電用の土地を確保するのが難しかったことから、全国に整備されていた自転車道路に着目したといいます。
ソーラーロードの実証実験では、道路で実際に発電ができることを証明したほか、電力消費地である都市部で発電することで送電ロスを低減できるなど多くの効果が得られました。
高速道路が発電所に。世界で進む実証実験
さらに、乗用車やトラックなどの通行に耐える路面太陽光発電の実証実験も世界各国で相次いで行われています。
2016年には、フランスが1,000kmの道路を「ソーラーロード」化し、約500万世帯に電力を供給することを目的とした実証実験を開始しました。この実験では、フランスの道路建設会社Colas社と、国立太陽エネルギー技術研究所が共同で開発した薄型の太陽光発電道路Wattwayが用いられました。
Wattwayは、表面の樹脂・ポリマー層と、太陽電池セル・保護層・支持層を重ねた多層構造でありながら、厚さはわずか約6mmという画期的な路面用太陽光発電システムです。道路に貼るようなイメージで施工できるので、既存の道路を大きく壊す必要がなく、現在では日本も含めた各国で採用が進んでいます。
また、米国ミズーリ州交通局(MoDOT)は、老朽化が進む高速道路の将来像を模索する「ROAD TO TOMORROW」プロジェクトの一環として、道路の一部にソーラーパネルを埋め込む実証実験を開始しています。ここで採用されたのは、アイダホ州のSolar Roadways社が開発した多層型のモジュールです。形状は一辺が約40cmの正六角形というユニークなもので、これを組み合わせて路面に施工します。その強度はアスファルトと同等レベルということです。
デジタル化によって道路の進化がはじまる
実は、路面太陽光発電の目的は発電するだけではありません。道路に発電機能を持たせることで、道路というインフラを大きく進化させることができるのです。
例えば、前述の米国ミズーリ州の「ROAD TO TOMORROW」プロジェクトでは、太陽光発電モジュールにLEDを取り付けることで、路面に交通情報やデジタル式の道路標識を表示することを検討しています。標識やセンターラインなどをLED表示にすれば、交通状況に合わせた最適な情報発信や走路変更が可能です。
また、耐圧センサーや物体検知センサーを組み合わせれば、シカやクマなど大型野生動物の道路侵入や落下物を検知して、LEDで運転者に注意喚起することもできます。
さらに、寒冷地では、太陽光発電モジュールにヒートパネルを組み込むことで、凍結を防ぎ、積雪を溶かすことで事故防止や除雪コストの削減につなげることができます。
道路が自ら発電することで、これまでにない新しい道路が続々と登場する可能性があるのです。
走るだけで充電できる、EV時代の新インフラに
こうした道路の進化形として大きな注目を集めているのが、EV(電気自動車)に電力を供給できる電化道路(Electric Road)です。EV先進国のスウェーデンでは、“走りながら充電する道路”の国家的な実証プロジェクトが進行しています。
同国では、温室効果ガスの排出ゼロを目指し、国をあげてEVの普及を進めていますが、長距離トラックは航続距離の問題でEV化が難しいという問題がありました。この解決を目指しているのが電化道路です。
当初は、トロリーバスのように架線から給電する方法や、道路に埋め込んだレールに集電装置を接触させて充電する方式でしたが、2020年から路面に敷かれた電磁石コイルからEVが電力を受信する無線給電方式の実証実験が行われています。
同様の実験は、米国インディアナ州でも行われていて、もしこれが実現できれば長距離トラックのEV化が可能になり、物流業界のCO2削減に大きなインパクトを与えることになるでしょう。
日本でも導入開始。実用化を阻む課題とは?
欧米からやや遅れて、日本でも近年、路面太陽光発電の導入が始まっています。東京都杉並区は、2023年に区役所前広場の路面に路面太陽光パネル(Wattway)の試験導入を行い、2024年にはイオンモール日の出(東京都日の出町)の駐車場、2025年には新宿御苑の園内路面に試験導入されました。
杉並区では導入の目的として「区内では、太陽光発電設備を設置できる箇所が限られているため、再生可能エネルギーの一層の普及を目指し、空間の有効活用の可能性を探る」としています。
このように、路面太陽光発電の取り組みは世界的に広がりを見せていますが、本格的な実用化にはまだ時間がかかりそうです。主な課題は、長期間にわたる耐久性の維持、発電効率の改善、メンテナンスの難しさ、そしてコストの高さです。そのため日本での導入も、今のところ自転車や歩行者が通行する場所や、駐車場内の通路に限られています。
しかし、道路が「通るだけの場所」から「エネルギーを生み出し、活用する場所」へと進化すれば、私たちの暮らしは大きく変わる可能性があります。屋根の上から始まった発電が街全体へと広がり、身の回りのあらゆる場所で電気が使える社会へ――その実現に向けた一歩として、路面太陽光発電のこれからに期待が高まります。
出典・参考文献
○タイナビ(太陽光発電導入ナビゲーション) ソーラーロードとは
https://www.tainavi.com/library/4048/
○杉並区 路面太陽光発電とは
https://www.city.suginami.tokyo.jp/s103/711.html
○FPI情報局 ソーラーロード
https://www.f-p-i.co.jp/information_service/fm-topics-387/
○ONTARIO SOCIETY OF PROFESSIONAL ENGINEERS
The [solar] road to a brighter future?
https://ospe.on.ca/community/road-brighter-future-research-continues-netherlands-first-solar-bike-path/?utm_source=chatgpt.co
○スマートジャパン 「太陽光発電道路」が米国で実証開始、米国発展を支えたルート66で
https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1607/19/news049.html
○AZO CLEANTECH Charging While We Drive: How Do Sweden's Electric Roads Work?
https://www.azocleantech.com/article.aspx?ArticleID=1964&utm_source=chatgpt.com
○EVcafe 世界初! 走りながらEVに充電可能な「ワイヤレス充電高速道路」ってどんなもの?
https://www.webcg.net/feature/evcafe/article/50204
○東亜道路 太陽光発電舗装システム(Wattway Pack)の施工について
https://www.toadoro.co.jp/news/docs/e590c0eb2fb880a96424221b21205c6fb1e236fb.pdf?utm_source=chatgpt.com
