パリ協定10年目の岐路。
揺れる「COP30」の成果とは?2025.12.25

今年も、国連の気候変動対策会議COPが11月10日から22日まで開催されました。会場となったのは、世界最大の熱帯雨林・アマゾンの玄関口として知られるブラジルのベレンです。大量のCO2を吸収・蓄積し、気候変動の緩和に大きな役割を果たしているアマゾンの地で、地球温暖化抑止に向けてどのような議論が行われたのでしょうか。例年以上に各国の意見の相違が浮き彫りになったCOP30の結果をまとめて紹介します。
米国代表団が参加しない異例の会議に
COPとは、1992年に「気候変動枠組条約」を締結した約200の国・機関の代表団が集まり、ほぼ毎年開催されている国際会議です。温室効果ガスの排出量削減や気候変動の影響を受けている途上国への支援などについて、国際的な合意形成が図られる重要な場になっています。
今回のCOP30は、歴史的なパリ協定が採択されてから10年目を迎える節目の会議となりました。しかし、祝賀ムードにはほど遠く、会議の先行きも明るいものではありませんでした。まず、「産業革命前からの気温上昇を2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」としたパリ協定の約束が10年を経ても果たされず、2024年にはついに世界の平均気温がプラス1.5℃を超えてしまいました。さらに、2025年も地球規模での温暖化が進み、温室効果ガスの排出量が過去最高を更新する見込みであるなど、COPに対する失望感が漂っていました。
また、これまで気候変動対策をリードしてきた欧米諸国の足並みが乱れ、実質的に米国が不在となったことも大きな影を落としました。ご存知の通りトランプ大統領は、気候変動対策や脱炭素の取り組みに批判的で、就任早々にパリ協定から離脱し、前政権で進めていた脱炭素関連の政策も軒並み中断。COP30への参加も取りやめ、国際会議の場に米国政府の代表団がいない極めて異例の事態となりました。
さらに欧州でも、環境対策に懐疑的な極右勢力の台頭によって、EU全体の温室効果ガス排出量の制限が緩和されるなど、気候変動対策の後退が目立ち始めていました。
後退した「化石燃料からの脱却」、ロードマップは示されず
こうしたなか、ブラジルのルラ大統領は、従来の「交渉のCOP」から「実行のCOP」への移行を目指す強い意気込みで会議に臨みました。とくに力を注いだのは、2年前の「COP28」で宣言された「化石燃料の段階的廃止」を実現するロードマップの作成です。ブラジルの主導で会議の序盤からこのテーマを精力的に議論したことで、一時は加盟国全体の43%に相当する80カ国超の賛同を得ることができました。その中には、ノルウェー、メキシコなどの石油・ガス産出国のほか、石炭火力からの脱却を表明した韓国も名を連ねました。
しかし、サウジアラビアやロシアを含む主要な産油国をはじめ、化石燃料を多用する国々から強い反発の声があがります。会議が進むにつれて激しい議論の応酬となり、両者の溝を埋めることはできませんでした。結果的に、COP30ではこのテーマに関していかなる成果も得ることができず、最終合意文書には、「化石燃料」という文言すら入りませんでした。これに対して賛同国から痛烈な批判が寄せられたのは言うまでもありません。
また、ロードマップの作成に賛同しなかった日本も多くの批判に晒されています。火力発電の燃料として化石燃料を多く使用する日本は、水素やアンモニアを混焼することで、化石燃料を使いながら技術力で脱炭素を進める方針を打ち出しましたが、理解を得ることはできませんでした。
途上国への資金援助は大きく前進
厳しい会議となったCOP30ですが、大きく前進できたテーマもあります。特筆すべきは、COP29で合意された「途上国を支えるための気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)」の実現へ向けて、大きな一歩を踏み出したことです。
気候資金とは、気候変動による悪影響を軽減する取り組みを支援する資金のことで、主に先進国が途上国に提供します。再生可能エネルギーの導入や省エネ支援だけでなく、豪雨・洪水・干ばつなどの気候災害から人々を守るためのインフラ整備などにも使われる重要な資金です。
COP29では、2035年までに従来の3倍である年間3,000億ドル以上の資金を先進国が途上国に支援することに合意しましたが、COP30ではその実現へ向けて、各国の閣僚級会合を正式に立ち上げることが決まりました。パリ協定が定める「先進国は途上国を経済的に支援する」という原則に沿って、今後2年間で気候資金全体の仕組みを整備する作業計画も動き出します。
また、激しい議論により各国の対立が深まったことから、今後の気候変動対策の方針を改めて取りまとめた「グローバル・ムチラオ」が採択されました。
ムチラオとは、ポルトガル語で「共同作業」「協働」という意味です。①パリ協定10周年、②交渉から実施への移行、③実施・連帯・国際協力の加速という三点を柱とし、温室効果ガスの排出量削減や気候資金といった幅広い内容について将来への指針を示しました。途上国と先進国が助け合い、気候危機を協働して乗り越える理念をまとめることで、将来へ希望をつなぐ合意文書になりました。

ムチラオの精神で希望のもてる未来へ
COP30は、「グローバル・ムチラオ」のほか、各分野で合意した29の項目を「ベレン・ポリティカル・パッケージ」として発表し、閉幕しました。29の議決内容は、適応資金、公正な移行、ジェンダーなどのテーマに関する合意や行動の加速化に向けた共同コミットメントの刷新などが含まれました。いずれもこれまでのCOPで提案されてきたことを、少しずつ実現へと近づけるもので、ブラジルのルラ大統領の掲げた「交渉のCOP」から「実行のCOP」への移行は一定の成果をあげたと言えます。
また、ブラジルからの提案によってアマゾンなどの熱帯雨林を守るための新しい国際基金「Tropical Forests Forever Facility(TFFF)」が創設されました。TFFFは、各国から集めた資金を投資運用し、その利益を森林保全や地域コミュニティの支援に活用するものです。COP30では初期フェーズとして63カ国から約67億ドル規模の資金拠出への賛同を得ることができました。

化石燃料の段階的廃止といった大きなテーマでは合意に至りませんでしたが、気候災害に備える適応策や途上国への支援を拡大する枠組みなど、いま世界が直面する課題に向けた実務的な前進が数多く見られました。
しかし、年々激しさを増す気候変動は、後戻りできないティッピング・ポイントに近づいているとの指摘もあります。ブラジルが掲げた“グローバル・ムチラオ(みんなで協力する)”の精神のもと、国際社会が分断ではなく協力を選び、希望のもてる未来へともに歩んでいくことを願うばかりです。
出典・参考文献
○環境省 国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30) 結果(概要)
https://www.env.go.jp/content/000356042.pdf
○環境省 国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30) 結果
https://www.env.go.jp/content/000267616.pdf
○環境ビジネス 「COP30、主要国の足並みそろわず議論停滞 日米ほか首脳級相次ぎ欠席」
https://www.kankyo-business.jp/column/e581f357-1511-4bd9-bdfa-958a1cd98d8d
○alterna 「野心欠くCOP30、合意文書に「化石燃料脱却」盛り込めず」
https://www.alterna.co.jp/164328/?utm_source=chatgpt.com
