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ふるさと納税「電気」の返礼品とは?2025.10.31

ふるさと納税と聞くと、ブランド牛やフルーツ、海産物など“おいしい返礼品”を思い浮かべる人が多いことでしょう。ところが近年、その返礼品のラインアップに「電気」が加わり、話題を呼んでいます。電気の返礼品にはどんなメリットがあるのでしょうか。そして、なぜ、自治体は電気を返礼品にしているのでしょうか。気になる疑問にわかりやすくお答えします。
「電気」の返礼品のメリットとは?
すでに、活用している人も多いと思いますが、ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付を行う制度です。寄付金から2,000円を除いた金額が、翌年の所得税と住民税から控除されるとともに、寄付金の30%を上限に、地場産品(その地域で生産・提供されたもの)を返礼品として受け取れることが大きな魅力です。そして、数年前から、この返礼品に電気が登場しています。
「電気が返礼品になる」と言っても、イメージが湧きにくいかもしれません。簡単に言うと、その自治体内にある太陽光や水力、地熱などを利用した再生可能エネルギー発電所で作ったCO2フリーの電気を割引価格で使用できるというものです。
例えば、大分県臼杵市の場合は、ふるさと納税として25,000円を寄付すると、太陽光やバイオマスによって臼杵市内の発電所で作られた電気を返礼品として受け取ることができ、そのうち300kWhを無料で使うことができます。300kWhは一般家庭のほぼ1カ月分の電気使用量に相当するので、1カ月分の電気代が無料になる計算です。
また、長野県伊那市にふるさと納税すると、市内の戸台水力発電所と小黒水力発電所で作られた電気を使うことができ、寄付金10,000円(一口)につき2,500円の電気代の割引を受けられます。このように電気を返礼品として扱っている自治体は全国にあり、主なものは下記の通りです。
電気は返礼品として認められるのか?
実は、この電気の返礼品は、過去に一度禁止されたことがありました。総務省は、返礼品として提供する電気が、その自治体で発電された電気だと証明できないことから、2021年に返礼品として認めないという通達を出したのです。ふるさと納税の返礼品は地場産品に限るというルールに反しているという主張です。
確かに、返礼品として「その自治体で発電されたCO2フリーの電気を提供する」と言っても、実際に、その自治体で発電された電気が自宅に届くわけではありません。
電気は、電力系統(送電網)という、巨大なネットワークを通じて、発電所から私たちの自宅などに届けられます。電力系統は地域ごとに、東京電力パワーグリッドなどの送配電事業者が管理しています。そこに、火力発電所や原子力発電所、再生エネ発電所など、あらゆる発電所から電気が送り込まれ、一体となって利用者に供給される仕組みです。つまり、一度、電力系統に送られた電気は、どこで誰が作った電気なのか、区別することはできません。このため総務省は、「実際に電気を提供しているわけではないのに、電気代の割引だけしている」と判断したのです。

再エネ発電の支援を通して、地域の活性化とCO2削減に貢献できる
しかし、この通達に対して、多くの自治体から反対の声が上がりました。とくに、再エネ発電を地域の新たな産業として育てていた自治体からは「再エネは地域で生まれる“地元の資源”そのもの。発電場所が明確で、地元企業や住民が支え育てているものを地場産品と認めないのはおかしい」「そもそもふるさと納税は、地域の経済や産業を支援するものであるはず」と大きな反発がありました。
さらに政府が2050年のカーボンニュートラル実現を打ち出し、再エネ発電の拡大を推進し始めたことも後押しになりました。
総務省は、電気をモノではなく、地域固有の環境価値として解釈し直すとともに、その地域の資源を使った再エネ発電に限るなど、いくつかの条件を設けることで、2022年から再び電気を返礼品として認めるようになりました。
これによって、
○地域の再エネ発電事業者は、電力販売で収益を確保できる
○自治体は、脱炭素の地域づくりを推進でき、町おこしの一環としてPRできる
○寄付者は、再エネを支援しながら、電気代の割引と税控除を受けられる
という、まさに“三方よし”の構図が実現したのです。

申し込む前に知っておきたいこと
このように、社会的にも価値のある電気の返礼品ですが、実際に申し込む際には、いくつか注意すべきことがあります。まず最初に気をつけたいのは、申し込める地域が限定されていることです。全国どこの自治体でも選べるわけではなく、基本的に、自宅と同じ電力系統内の自治体だけです。ほとんどの場合、東京電力系や関西電力系など、自宅と同じ電力送配電会社の管内にある自治体であれば申し込めますが、さらに地域を限定している場合もありますので、申し込み要項を確認してください。
また、申し込みに際しては、電力会社の契約を変更する必要があります。現在契約している電力会社から、各自治体の発電所の電力を扱う電力小売事業者へ契約を切り替えなければなりません。この手続きは少し面倒ですが、自治体によっては契約変更を代行してくれることもあります。
さらに、電気代が安くなることだけを期待して申し込むのはあまりおすすめしません。各自治体の案内の通り、返礼品として電気を選ぶと、寄付金に応じて一定量の電気が無料になったり、割引が受けられます。しかし、無料分の電気や割引額を使い終わった後は、新たに契約した電力小売事業者の通常料金が適用されます。再エネ発電は、大手電力会社よりも料金が高くなるケースもあるので、気になる人は事前に年間の電気代をシミュレーションしておくとよいでしょう。
電気の返礼品は、おトクさを求めるよりは、自分たちがCO2排出量の削減に貢献し、再エネ発電に取り組む自治体を支えているという誇りや充足感が大きな魅力です。「うちはCO2フリーの電気を使っている」「風光明媚な山中にあるあの小規模水力発電所を自分たちが支えている」といった満足感も意外に大きいものがあります。しかも、税金の控除はしっかりと受けられます。
そろそろ来年の税控除を受けるためのふるさと納税の締切が迫ってきました。電気の返礼品は、まだ知る人が少ないため、始めるなら今がチャンスです。
出典・参考文献
○総務省「ふるさと納税制度の見直し(指定制度の導入)について(令和元年)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000826061.pdf
○ふるさとチョイス 「電気代、ふるさと納税で。お礼の電力・仕組み」
https://www.furusato-tax.jp/feature/a/series_energy?search_ttarea-category
