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「大阪・関西万博」で体験しよう!
未来の太陽光発電。2025.07.31

「大阪・関西万博」で体験しよう!未来の太陽光発電。

連日多くの来場者が押し寄せ、さまざまなイベントで盛り上がっている「大阪・関西万博」。この夏休み、万博を訪れる予定の人も多いのではないでしょうか。今回はそんな皆さんに、万博の隠れた“見どころ”をご紹介しましょう。おすすめは、次世代の太陽光発電である「ペロブスカイト太陽電池」。大阪・関西万博では、会場内の各所で、ペロブスカイト太陽電池の可能性を探るさまざまな実証実験が行われています。今までの常識を覆す未来の太陽光発電をひと足先に体験してみませんか。

万博でお披露目、世界をリードする日本の太陽光発電

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとした大阪・関西万博では、世界が直面しているさまざまな社会課題を最先端技術で解決する未来社会のデモンストレーションが行われています。
エネルギーの分野でも、各パビリオンで多くの先端技術が紹介されていますが、とくに注目を集めているのが実用化へのカウントダウンが始まっているペロブスカイト太陽電池です。

ペロブスカイト太陽電池は、これまでのシリコンを用いた太陽電池と比べて、薄く、軽量で、曲げられるのが大きな特長です。従来の太陽電池では、重量などの問題で困難だったビルの壁面やガラス面への設置もでき、より幅広い場所で再生可能エネルギー発電が行えるようになります。

また、ペロブスカイト太陽電池は日本で発明された技術であり、実用化へ向けた開発も日本が世界をリードしています。原材料のヨウ素を国内で生産できることも、大きなメリットのひとつです。材料の多くを中国に依存しているシリコン型太陽電池に比べて、より安定的な再生可能エネルギーの供給につながると期待されています。
このため日本政府は、2040年までにペロブスカイト太陽電池の発電規模を原発20基分に相当する約20ギガワットまで普及させる目標を打ち出しており、大阪・関西万博でも、多くの日本企業がペロブスカイト太陽電池のある未来の暮らしを提案しています。

世界最大級のペロブスカイト太陽電池が登場

世界最大級のペロブスカイト太陽電池が登場

万博会場に足を運んで、最初に見ることができるペロブスカイト太陽電池は、西ゲート交通ターミナルのバスシェルターにあります。ターミナルを囲むように設置された曲面デザインの屋根には、厚さわずか1mmのフィルム型ペロブスカイト太陽電池が、約250mにわたって貼り付けられています。
「薄くて、軽くて、曲がる」というペロブスカイト太陽電池だからできることであり、その規模は世界最大級。発電された電力は16基ある大型蓄電池に充電され、バス停の夜間照明などに利用されています。

開発を担当した積水化学工業は、大阪・関西万博の「未来ショーケース事業(グリーン万博)」に協賛し、開発中のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を提供。約半年間にわたって万博会場に実装することで、曇りや雨の日でも発電ができる同電池の性能や耐久性を実証し、早期の事業化を目指しているそうです。

ペロブスカイト太陽電池

西ゲート交通ターミナルのバス停に約250mにわたって設置されているペロブスカイト太陽電池

発電できる!? スタッフユニフォーム

万博の会場内に入ったら、スタッフの着用しているユニフォームに注目してみましょう。「よしもと waraii myraii館」など、一部のパビリオンスタッフは、背中に4枚のペロブスカイト太陽電池を装着したスマートウェアを着用しています。発電された電気はポータブルバッテリーに充電され、首にかけた冷却ファンの動力に使用されるほか、来場者のスマートフォンの充電にも利用できるそうです。

気になる着心地は快適そのもの。太陽電池の重さはわずか10gであり、特殊な縫製技術によって配線なしでウェアに装着されているため、違和感がなく長時間着用できるそうです。
開発したのは、自動車部品メーカーの豊田合成とエネコートテクノロジーズ、セーレン。暑い屋外で作業する人や、林業・漁業など電源の確保が難しい環境で働く人のために商品化を目指しています。
こうしたウェアがさらに進化すれば、近い将来、誰でもどこでも気軽に太陽光発電ができるようになり、スマートフォンやモバイル機器の電池切れを心配する必要がなくなるかもしれません。

街に映える、アートのような発電装置

また、パナソニックグループパビリオン「ノモの国」では、これまでの太陽光発電のイメージを覆す、おしゃれな発電装置が展示されています。使用されているのは透明なガラス型ペロブスカイト太陽電池。透明な電極を使うことで可視光の一部を透過させることができ、「発電するガラス」とも呼ばれます。

主に、窓ガラスなどへの応用が期待されていますが、パナソニックグループでは独自の材料技術やインクジェット塗布製法、レーザー加工技術を組み合わせることでデザインの自由度を高め、街の風景に調和する太陽光発電として製品化を進めています。

万博会場では、作家・輪島楓さんの作品をペロブスカイト太陽電池に印刷したアートな発電装置を見ることができます。その透明感のあるデザインは、とても太陽電池とは思えない美しさであり、ペロブスカイト太陽電池を用いた世界初のアート作品(2025年2月14日パナソニックグループ調べ)だそうです。
現在の黒を基調とした太陽光パネルは、景観性の課題を指摘されることがありますが、ガラス型ペロブスカイト太陽電池なら、設置場所の選択肢を大幅に増やすことができるでしょう。

未来のエネルギーを見に行こう

さらに、「未来の都市」パビリオンや、「電力館 可能性のタマゴたち」パビリオンには、ペロブスカイト太陽電池を使ったスマートポールが設置されています。
高さ6m、太さ40cmのポールには、通信基地局や公衆Wi-Fi、街路灯、AIカメラ、ワイヤレス充電、デジタルサイネージなどが備えられ、最上部にはペロブスカイト太陽電池と風力発電装置が取り付けられています。AIカメラを活用した人流解析・迷子探査を行うほか、災害や停電が発生した際には、周囲を明るく照らすとともに、デジタルデバイスの充電なども行えます。
開発した関西電力送配電によると、将来的には、クルマの自動運転のサポートやドローンポートとしての機能も担い、都市の新たなインフラとして整備する予定だといいます。

大阪・関西万博の会期も、いよいよ10月13日まで。人気のパビリオンを楽しむとともに、ぜひ、ペロブスカイト太陽電池がつくる、未来の風景を体験してください。

出典・参考文献
○積水化学工業
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)への協賛およびフィルム型ペロブスカイト太陽電池の設置について https://www.sekisui.co.jp/news/2023/1390849_40075.html
○パナソニックホールディングス
ガラス型ペロブスカイト太陽電池の可能性を追求したプロトタイプを大阪・関西万博パナソニックグループパビリオンに展示 https://news.panasonic.com/jp/press/jn250214-1
○豊田合成
大阪・関西万博で次世代技術を紹介 https://www.toyoda-gosei.co.jp/news/details.php?id=1394
○関西電力送配電
2025年大阪関西万博におけるスマートポール、展示等の概要
https://www.kansai-td.co.jp/banpaku/pdf/20250310_01.pdf

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