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海外メーカーに押され気味?
どうなる日本のモノづくり。2024.05.30

いよいよ補助金終了!5 月から電気代が大幅上げ

かつて、モノづくり大国として世界市場を席巻していた日本企業ですが、最近ニュースになるのはGAFAMやテスラ、エヌビディアなどの米国の巨大ハイテク企業や、中国、台湾、韓国のメーカーばかり。グローバル市場で日本企業の地位が低下しつつあると感じている人も多いのではないでしょうか? 今後、日本のモノづくりはどうなっていくのでしょうか。歴史を振り返りながらその未来を探ってみましょう。

強さの秘密は「カイゼン」の精神にあった

手先が器用で、繊細な美意識をもつ日本人は、古くから日用品や工芸品、刀剣、建築などの分野において、優れた作品を生み出してきました。また、日本企業のモノづくりの力を世界に知らしめた電気製品に目を向けると、その原点は古く、1760 年頃に平賀源内が製作したエレキテルに辿り着きます。
エレキテルは静電気を発生させて蓄電と放電ができる装置で、当時の人々に電気の存在を知らせ、後の電気技術の発展にも貢献しました。しかし、このエレキテル、実は平賀源内が発明したものではありません。すでに西洋で作られていた静電気発生装置の輸入品や蘭学の書物をもとに、独自の改良を加えて完成させたものだったのです。このように、新しいものに興味をもち、器用さとこだわりで改良して新たな価値を生み出す手法は、今日まで続く日本のモノづくりの特長と言えます。

例えば、1954 年に発売され世界中で大人気となったソニーのトランジスタラジオ「TR-55」。真空管をトランジスタに変えることでラジオを小型化する技術は、その前年に米国で開発されていましたが、ソニーは、独自の技術でさらに小型化・高性能化するとともに、効率的な生産システムを構築。価格を下げることで気軽に持ち運べる世界初のポータブルラジオとして大ヒットしました。
また、ビデオカセットレコーダーも、最初に開発したのは米国企業ですが、ソニー、松下電器( 現・パナソニック) などが家庭用に使いやすく小型化し、観たい映画やテレビ番組がいつでも楽しめる時代の幕を開けました。後に、松下電器が主導したVHS 規格が世界のスタンダードとなったのはご存知の通りです。
さらに世界中で愛された任天堂の「ファミリーコンピュータ」も、米国メーカーの家庭用ゲーム機をヒントに生まれたものです。十字キーとA・B ボタンだけというシンプルな操作性と、アーケードゲームに近づけたグラフィックの美しさ、そして何よりもサードパーティーに門戸を開くなど、魅力的なゲームソフトをラインアップしたことで大きな成功を納めました。
そのほかにも、カラーテレビやデジタルカメラなど、日本企業の優れた技術力と品質へのこだわりが先行製品に新たな価値を加え、日本発の製品として世界に普及させた例は枚挙に暇がありません。

強さの秘密は「カイゼン」の精神にあった

日本ならではの視点が画期的な製品を生み出す

また、日本のモノづくりのもうひとつの特長は、独自の視点で今までにないまったく新しい製品を生み出す力があることです。代表的な例は1979 年にソニーが発売した世界初の携帯型カセットプレーヤー「ウォークマン」です。ラジオやテレビ開発で培った小型化の技術と、ポータブルオーディオ市場の可能性を見抜いた経営判断で、屋外で音楽を楽しむという新しい文化を生み出し世界中の若者の心を掴みました。
1980 年にTOTO が発売した世界初の洗浄機能付きトイレ「ウォシュレット」は、温水洗浄機能を備え、トイレの使用後に紙を使わずに清潔に保つことができる画期的な製品でした。日本ならではの高い衛生意識から生まれ、ノズルの位置や角度に徹底的にこだわった快適な使用感が世界のセレブにも絶賛され、今もなお、多彩な機能を搭載したスマートトイレとして進化を続けています。

日本ならではの視点が画期的な製品を生み出す

また、長い年月をかけてアイデアを熟成させ、実用化するのも日本らしいモノづくりです。例えば、トヨタ自動車が世界初の量産型ハイブリッド乗用車として発売した「プリウス」。モーターとエンジンを併用して走行するアイデアは古くからあり、トヨタ自動車が初めてハイブリッドカーのコンセプトモデルを発表したのも1975 年の東京モーターショーでした。その後、モーターや電池などの性能や価格がネックとなり多くのメーカーが脱落するなかトヨタ自動車は地道な開発を続け、1997 年に28km/L という当時としては驚異的な燃費と、約215 万円という戦略的な価格で最新テクノロジーを満載した次世代車を発売したのです。

当初、ハイブリッドカーは電気自動車や燃料電池車が普及するまでのつなぎと見られ、追随する欧米メーカーはほとんどなかったのですが、電気自動車の普及が鈍化するなか、主要14カ国の2023 年のハイブリッドカー販売台数は前年比3 割増。充電不要の利便性と低燃費、手頃な価格が世界から評価され、トヨタ自動車がその牽引役を担っています。



裏方に回った? 日本のモノづくり

ハイブリッドカーの成功は、モノづくり大国の面目躍如といったところですが、改めて身の回りを見渡してみると、以前に比べて日本製品の存在感が薄くなっているのも事実です。白物家電からはすでに多くの日本メーカーが撤退し、パソコンやモバイル機器も、海外メーカー品が多くなりました。やはり日本のモノづくりは、かつてのような勢いがなくなってしまったのでしょうか。

結論から言うと、日本は今でも世界に冠たるモノづくり大国です。しかし、いくつかの理由によって、その姿が少し変わりつつあります。具体的には、「グローバルでの価格競争の激化」「消費者市場の多様化と変化の速さ」「BtoB 市場へのシフト」です。
価格競争においては、中国、韓国、台湾などの新興メーカーが急速に力をつけ、価格競争力のある製品を投入してくるようになりました。これに対して日本は品質を重視するあまり、苦戦することが多くなっています。また、スマートフォンなどのデジタルデバイスの開発では、ユーザーニーズを素早く掴み、デザイン、ユーザーエクスペリエンスにおいて、グローバル市場のトレンドにあった製品の開発・投入が不可欠です。しかし日本企業は、リスク回避的で革新的なアイデアを試すことに慎重であるため、どうしてもスピード感に欠けてしまいます。

一方で、純粋に技術力や品質の高さが求められるBtoB 市場では、俄然強みを発揮します。コンシューマー向け製品と異なり安定的な需要が期待できることから、BtoB へとシフトする企業も多くなりました。
一方、以前のようにコンシューマー向け製品にスポットが当たることが少なくなってきたようです。しかし、世界中で人気のモバイルデバイスも、その中には多くの日本製品が組み込まれており、日本のモノづくりがなくては作れない製品ばかりです。今後も、前々回のコラムでご紹介した全固体電池も含め、最先端の分野における日本の役割が期待されています。

裏方に回った? 日本のモノづくり

モノづくりの夢をもう一度

このように日本のモノづくりは、いまでも世界で大きな存在感を発揮しています。しかし、以前のように日々の暮らしを楽しく変えてくれるような革新的な製品が日本から登場することを願う人は多いことでしょう。もちろん、日本の多くの企業は現状の課題を認識しており、さまざまな組織改革・意識改革を通して、イノベーション創出や、経営判断のスピードアップに取り組んでいます。こうした成果が、世界最高レベルの技術力と融合したとき、再び、胸が踊るような製品の登場も期待できることでしょう。

ニチコンでも、2012 年に日本初の家庭用蓄電システムと、電気自動車の電力を家庭でも活用できる世界初のV2H(Vehicle to Home)システムを開発。さらに家庭の太陽光発電、蓄電池、電気自動車を一台のコンパクトな装置で制御する画期的なトライブリッドも開発するなど、蓄電池の分野で暮らしの安心と快適を高めるモノづくりに挑戦し続けています。

※出典・参考文献
https://global.toyota/jp/prius20th/evolution/

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