再びはじまる! 電気料金値上げ。
どうなる負担軽減策?2024.02.28
このところ落ち着きを取り戻していた電気料金が、2024 年に入り再び上昇を始めています。1 月の電力大手5 社による値上げを皮切りに、2 月~4 月にかけてほとんどの電力会社が値上げを発表。さらに、5 月には大幅な値上げの可能性も予想されています。なぜ、再び電気料金が上昇し始めているのでしょうか。今後の見通しと対応策についてご紹介しましょう。
電気料金の乱高下が続く理由とは?
日本国内の電気料金は2022 年に大きく値上がりし、その後も目まぐるしく変動を続けています。きっかけになったのは、ご存知の通りロシアによるウクライナ侵攻です。世界有数の石油・石炭・天然ガスの産出国であるロシアに対して、米国やEU が輸出規制を行っていることで価格が高騰。とくに、発電量の7 割以上を火力発電に頼っている日本では、燃料価格の高騰が電気料金を直撃しています。
さらに、日本が火力発電の主要燃料としている液化天然ガス(LNG) は、CO2 排出量が少ないため世界的に需要が高まっていることに加え、長引く円安の影響もあり、価格高騰に拍車がかかっているのです。
もうひとつ、日本の国内事情として慢性的な電力供給量不足という問題があります。実は、国内の電力供給量は、2010 年と比較して10% 以上減少しています。東日本大震災の影響によりかつて発電量の1/4を占めていた原子力発電の大半がなくなったためです。さらに、火力発電も2016 年の電力自由化によって競争が激化し、採算性の悪い老朽化した火力発電所が休廃止されたため発電量が減少しています。供給量に余裕があれば、電気料金の値下がりにつながりますが、供給量がひっ迫しているので電力需要が増加すると日本卸電力取引所(JEPX) に流通する電気が減り、価格上昇につながるのです。
実は大きかった「電気・ガス価格激変緩和対策」の恩恵
こうした状況にも関わらず、この1 年ほど電気代の値上がりがあまりニュースにならなかったのは、日本政府が2023 年1 月から開始した「電気・ガス価格激変緩和対策」のおかげです。電気料金高騰による家庭や企業の負担を軽減するため、電気料金の単価から一定の額を値引きする政策です。とくに申請などは必要なく、電力会社からの請求が自動的に割り引かれるので、実感していない人が多いかもしれませんが、このおかげで2023 年の電気料金は前年に比べて低く抑えられていました。
再びはじまる、電気料金の値上げラッシュ
しかし、2024 年の1 月から再び電気代の値上げが始まりました。大手電力会社のほとんどが4 月まで連続して値上げを行う計画です。値上げ幅はそこまで大きくありませんが、先行きに不安を抱かせる状況になりつつあります。
1 月~3 月の値上げの理由は、LNG のさらなる価格上昇です。前述のようにLNG は地球温暖化抑止の観点から需要が高まっていますが、将来的な脱炭素社会へ向けて新たな生産施設建設の投資が控えられているため供給量が増える見込みはありません。火力発電比率の高い日本の電気料金は今後もLNG 価格に振り回されることでしょう。
また、4 月の値上げは、送配電網の使用料である「託送料金」の見直しが主な原因です。従来、託送料金は電気の小売事業者が全て負担していましたが、送電線は発電と小売会社の双方が使うことから、公平な分担とするため4 月から発電会社にも1 割の負担を求める制度が始まったためです。
5 月には大幅値上げの可能性も
さらに、2024 年5 月には大手電力会社10 社全社で電気料金が値上がりする見通しです。これは、これまで電気料金を抑えていた政府の「電気・ガス価格激変緩和対策」が終了してしまうためです。
もともとこの対策は、2023 年10 月に終了する予定でしたが、円安による物価上昇で国民負担が増加したことから、規模を縮小して2024 年4 月まで延長されていました。それがいよいよ終了時期を迎えつつあるのです。今後、政治判断によってさらに延長される可能性もありますが、現時点では、5 月には電気料金の値引きが現在の半分に縮小され、その後廃止される可能性もあります。
これによって、2024 年5月以降の電気代は、一般家庭(低圧)で1.8 円/kWh 値上がりすると予想されます。電気代に換算すると、一般家庭の場合(4人家族、月々の電気使用量が500kWh)は月々約900 円、年間にすると約10,800 円の値上げとなる見込みです。これにLNG の価格上昇が重なると、さらに電気代の負担が増えることになるでしょう。
価格高騰が続くLNG、どうなる私たちの電気料金
厳しい状況が続くなか、今後の電気料金はどうなってしまうのでしょうか。鍵を握るのはやはりLNG 価格です。経済産業省は「2026 年頃までLNG は世界的にソールドアウト状態」としており、余談を許さない状態が続くようです。EIA( 米国エネルギー省エネルギー情報局) による世界のLNG 市場の長期予測をみてもLNG 価格は今後も上昇を続け、2050 年には現在の2~3 倍になると予想されています。
こうした構造的な問題を解決するには、火力発電の比率を抑え、他の電源を増やしていくしかありません。有力候補は原子力発電と再生可能エネルギー発電です。原発の再稼働は、電気料金を下げるために大変効果的であり、2024 年は東北電力の女川原子力発電所2 号機、中国電力の島根原子力発電所2 号機で再稼働の計画があり、東京電力が管理する柏崎刈羽原発を含めた5 基が再稼働を目指しています。しかし、能登半島地震が大きな被害を出すなか、安全面への不安は根強く、再稼働への道のりは簡単ではないでしょう。
再生可能エネルギー発電は、政府が2030 年までに発電割合を36~38% とする目標を掲げ、拡大を急いでいます。しかし台風や梅雨などの気象条件と山地の多い国土環境のため、日本国内での大規模な発電施設の増設には限度があります。
このように、今後も電気料金の値上がりが予想されるなか、俄然注目を集めるのが自宅への住宅用太陽光発電の導入です。蓄電システムも併用すれば発電した電力を有効活用できるので、電力会社から購入する電気を削減でき、電気料金値上げの影響を抑えることができます。また、電気の自家消費が増えることは、電力需要を減らすことにもつながり、電気料金の値下げにつながる可能性もあります。
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