マンスリーコラム

蓄電や暮らしに関する
さまざまなトピックスを
毎月お届け。

「COP28」で大きな成果!
ついに「化石燃料からの脱却」を宣言。2023.12.27

「COP28」で大きな成果!ついに「化石燃料からの脱却」を宣言。

2023年11月30日から12月12日までの予定でアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開催されていた「COP28」。先進国と産油国の対立から合意文書の取りまとめが難航し、徹夜の議論の末、会期を一日延長して12月13日に閉幕しました。世界のほぼすべての国から代表団が集まり、温暖化抑止について話し合う国際会議でどのようなことが決まったのか。詳しい内容について紹介しましょう。

そもそも「COP」とは何か?

「COP28」の正式名称は、「第28回国連気候変動枠組条約締約国会議」です。「COP」は、Conference of the Parties(締約国会議)の頭文字をとったもので、1992年に国連で採択された「気候変動枠組条約」を締結した約200の国と地域の代表団が集まり、ほぼ毎年、約2週間にわたって会議が行われています。

「気候変動枠組条約」は、大気中の温室効果ガスの濃度をこれ以上増やさないことを目標に、世界各国が協力していくことを定めた画期的な条約です。しかし、どうやって温室効果ガスを減らしていくのか、具体的なルールや目標は記載されませんでした。先進国と途上国による立場の違いや、その国の産業構造の違いなどにより一律に目標を定めるのが困難だったからです。そこで毎年「COP」を開催し、少しずつ具体的なルールづくりを進めているのです。
温室効果ガスの削減には、産業や経済を支える化石燃料の使用制限が必要であることから、「COP」は各国の利害が激しく対立する場でもあります。それでも、回を重ねるごとにさまざまな成果を生み出してきました。

これまでのCOPの推移と関連事項

1997年に日本で開催された「COP3」では、「京都議定書」が採択され、先進国に対して温室効果ガスの削減目標を初めて数値で示し、国際社会が協力して温暖化に取り組む第一歩となりました。また、2015年の「COP21」で採択された「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度よりも十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする」という数値目標が初めて打ち出されました。これによって全締約国が2030年までの温室効果ガスの排出量削減目標を設定するとともに、その実現へ向けた取り組みが本格化しました。

人類が長年頼ってきた「化石燃料からの脱却」を宣言

では、今回の「COP28」では、どのような議論が行われたのでしょうか。産油国であるUAEが議長国を務めることでも注目を集めるなか、最も関心を集めたテーマが化石燃料からの脱却でした。
産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるためには、世界の温室効果ガス排出量の7割以上を占める化石燃料の削減が不可欠です。すでに地球の平均気温は1.1度上昇しており、2023年は史上最高を更新することが確実視されています。従来の削減目標では気温上昇は3度近くになることが予想されることから、欧米や海面上昇などによる国土喪失の危機に直面している島嶼(とうしょ)国からは対策が不十分だという声があがっていました。
そのため、合意文書に「化石燃料の段階的廃止」の文言を盛り込むことが強く求められましたが、産油国のサウジアラビアなどが反対し、議長案では「化石燃料の消費と生産を低減」という表現に後退しました。これに欧州や島嶼国などが強く反発。合意文書の取りまとめが難航し、会期が1日延長される原因になりました。
結果的に、両者の折衷案として「2030年までに化石燃料からの脱却をめざす」という文言で、合意に至りました。「段階的廃止」にまで踏み込めなかったことについて不満も出ていますが、人類が長年頼ってきた化石燃料からの脱却を初めて宣言することができたのです。

このほかにも、世界全体の再生可能エネルギーの発電容量を2030年までに3倍(2022年比)にし、エネルギー効率を世界平均で年2%から4%超に倍増させることなど、さまざまな合意を成し遂げました。

「COP28」の主な成果

厳しい立場に立たされる日本

「COP28」は大きな成果を残したと言えますが、その合意内容は日本にとって厳しいものになっています。それは、日本が電力の約3割を石炭火力発電に頼っていて、その削減が難しいからです。
石炭は、化石燃料の中で最も二酸化炭素の排出量が多く、化石燃料からの脱却を推進する上で、一番に削減すべきものです。「COP28」の首脳級会合でも、米国、フランス、カナダ、EUなど9カ国・地域によって、石炭火力発電からの脱却をめざす有志国連合が設立されましたが、日本は参加を見送りました。
また、先進国に対して2030年までに石炭火力発電の廃止を求めている「脱石炭連盟(PPCA)」についても、米国やチェコなどが「COP28」の期間中に加盟を発表し、参加国数が57カ国に増える一方、日本はG7の中で唯一加盟していない国になってしまいました。

日本政府は、エネルギーの安定供給のため、2030年度時点でも総発電量の19%を石炭火力でまかなう計画を立てています。岸田文雄首相も「COP28」首脳級会合において、排出削減対策の講じられていない石炭火力の建設を終了していくと表明したものの、約170基ある既設の発電所の廃止時期は示しませんでした。これに対して、国際的な環境NGOである「CAN」は、地球温暖化対策に消極的な国として、日本に「化石賞」を贈るなど、批判の目が向けられています。

日本における2030年度の電源構成(暫定値)、2020年 世界の二酸化炭素排出量・国別割合

また、前述の再生可能エネルギーによる発電容量を2030年までに3倍にするという合意も、日本にとって厳しいものになっています。現時点で日本政府の掲げている目標は、2030年度までに再生可能エネルギーの比率を36~38%まで引き上げることであり、これでは2倍にも届きません。もちろん、3倍というのは世界全体での話で、すべての国が3倍にする必要はありませんし、日本は山間部が多く、太陽光や風力発電に適した土地が限られているという事情もあります。しかし先進国であり、二酸化炭素排出量が世界4位(2020年時点)である日本には、それなりの責任と行動が求められることでしょう。

こうしたなか、再生可能エネルギー発電を増やす重要な手段のひとつになっているのが、住宅への太陽光発電の導入です。東京都と神奈川県川崎市が、新築建築物に太陽光パネルの設置義務化する条例を制定しましたが、こうした流れを日本全国に広げていく必要があるでしょう。ニチコンでは、昼間の太陽光発電を無駄なく夜にも活用したり、お天気任せの発電量の調整電源として重要な役割を担っている蓄電システムの普及を通じて、日本の再生可能エネルギーの普及拡大に貢献していきます。

一覧へ戻る