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再エネ普及を影で操る、
「ESG投資」とはなにか?2023.11.28

再エネ普及を影で操る、「ESG投資」とはなにか?

世界中で加速する再生可能エネルギーの活用。その理由はもちろん、脱炭素による地球温暖化の抑止であり、多くの企業が国連気候変動枠組条約などの目標達成へ向けて努力を重ねています。ところがもうひとつ、世界中の企業にとって、脱炭素に取り組まなければならない大きな理由があります。それがESG投資です。企業の環境活動に大きな影響力をもつESG投資について、わかりやすくご紹介しましょう。

ESG投資とは?

「ESG」や「ESG経営」という言葉はよく耳にするようになりましたが、「ESG投資」は、あまり知られていないかもしれません。ESGはご存じの通り、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとったもので、一般的には環境・社会・ガバナンスに配慮した企業経営(ESG経営)という文脈で使われることが多くなっています。しかし、歴史を遡れば、ESGは投資活動の分野で生まれた言葉なのです。

きっかけは、2006年に国連がESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI)を提唱したことです。経済が発展していく過程で、環境問題(E)や、労働者の人権に関わる社会問題(S)、従業員による不祥事など企業統治の問題(G)が浮上したことから、機関投資家に対して、ESGに配慮しない企業には投資を行わないように呼びかけたことが始まりでした。
米国では、歴史的に教会などが資産を運用する際に、キリスト教の教義や価値観に反する酒、たばこ、ギャンブル、武器などに関わる企業を投資対象から外していたことから、こうした概念は欧米を中心に浸透しやすかったのでしょう。「責任投資原則」(PRI)に署名した投資機関は、2022年末現在で5,314機関。運用資産合計は121.3兆ドル、日本円で1京8,195兆円という巨額に達しています。(1ドル150円換算)

PRI署名機関の推移

世界の機関投資家は、なぜESG投資をするのか?

これだけ多くの投資機関がESG投資をするようになると、企業側も、“ESGに取り組まないと投資を得られない”という事態になってきます。多くの企業が環境・社会・ガバナンスに配慮したESG経営に取り組むようになった背景にはこうした事情もあるのです。つまり、ESG投資がESG経営を生んだと言えます。

ところで、利益追求を最大の目的とする世界中の機関投資家が、なぜこれほど熱心にESG投資に取り組むのでしょうか。もちろん、ESG経営に熱心な優良企業をサポートするという目的もあると思いますが、一番の目的は、ESG投資が投資活動のリスクヘッジに重要な役割を果たしているからです。
投資家が求めるのは、長期間・安定的に成長し、確実にリターンを得られる投資先です。こうした投資先を選ぶには、売上や利益、成長率などの財務情報を精査するだけでなく、ESGへの取り組みといった非財務情報も重要な判断材料になります。
例えば、環境対策を蔑ろにしている企業は環境破壊を引き起こし、企業価値を損なうリスクがあります。サプライチェーンも含めて、人権への配慮に欠ける企業は不買運動などが起こり事業継続が困難になるかもしれません。ガバナンスが機能していない企業は、大きな不祥事を起こすリスクがあります。ESGを投資の指標にすることで、こうしたリスクのある企業を投資先から排除することができるのです。
近年では、ESGに配慮した経営をしている企業を客観的に評価するESG指数を金融・証券会社などが独自の基準で発表しており、投資活動の参考になっています。代表的なESG指数には、下記のようなものがあります。

代表的なESG指数

ESG投資の増加が、再生可能エネルギーの普及を後押し

前段で、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI)に署名した機関投資家が増えていると紹介しましたが、実際、ESG投資はどのくらい増えているのでしょうか。実は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界的な金融緩和や、SDGsへの関心の高まりによってESG市場が急拡大しています。
国際NGOのClimate Bonds Initiativeによると、2015年から2021年の5年間で、欧州ではESG投資額が約15倍に拡大。アジア太平洋では約20倍、北米では約15倍と、世界のほぼすべての地域でESG投資が急増しています。
また、この統計では、投資内容をグリーン、ソーシャル、サステナビリティの3つに区分しているので、投資分野の割合も知ることができます。グリーンは環境問題を解決する投資、ソーシャルは社会課題を解決することに特化した投資、サステナビリティとは環境問題と社会課題の双方を解決することを目的とした投資です。どの地域でもグリーン投資がESG投資全体の半分以上を占めていることがわかります。

世界の地域別ESG投資額変化とアジア太平洋地域のESG投資額(2021年)

では、日本のESG投資はどうなっているのでしょうか。アジア太平洋地域の投資額ランキングでは、中国が圧倒的な第1位で日本は2位です。ただし、韓国や中国と比べてみても、日本は経済規模に対して投資が少ないのが現状です。
もちろん日本でも毎年着実に投資額は伸びているので、今後の巻き返しが期待されています。また、上のグラフを見てもわかる通り、各国の投資内訳で一番多いのは環境分野です。日本企業も再生可能エネルギーの活用を拡大し、環境分野での取り組みを強化することが世界の機関投資家からESG投資を呼び込むカギになるでしょう。
ニチコンでも、蓄電池をはじめとする多様な環境・エネルギー製品の提供を通して、企業の脱炭素の取り組みを支援し、ESG経営の推進と、より良い未来づくりに貢献していきます。

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