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「ChatGPT」で業務が変わる?
電力業界の“生成AI”活用最前線。2023.10.02

「ChatGPT」で業務が変わる?電力業界の“生成AI”活用最前線。

今年、大きな話題を集めた生成AI。自動的に文章を作ったり、絵を描いたり、作曲をしたり。そのクオリティの高さに驚いた人も多いのではないでしょうか。主にクリエイティブな分野で注目を集めた生成AIですが、最近では業務に導入する企業も増え、電力業界でも取り組みが始まっています。生成AIは業務の中でどのように活用されていくのでしょうか、各社の動向を探ってみましょう。

生成AIの主役、「ChatGPT」とは?

生成AIのブームに火を付けたのは、米国のOpenAI社が開発した「ChatGPT」。2022年11月にリリースされた無料版「ChatGPT-3.5」は世界に衝撃を与えました。まるで、人と同じような感覚で会話ができ、入力した指示(プロンプト)に応じて、文書作成や資料の要約、小説の執筆、さらにはプログラミングまでできてしまう。人間にしかできないと思われていたことを一瞬で成し遂げてしまうその能力は、驚き以外の何者でもありません。
また、生成AIには、得意分野に合わせてさまざまな種類があり、「文章生成AI」「画像生成AI」「動画生成AI」「音声生成AI」「コード生成AI」などがあります。「ChatGPT」は、文章生成AIであり、米Microsoft社が提供している検索エンジン「Bing」も文章生成AIの一種です。さらに画像生成AIでは、「Stable Diffusion」や「Midjourney」が有名で、その精度の高いイラストや画像を皆さんもご覧になったことがあることでしょう。

しかし、現状の生成AIはまだ完璧とは言えません。予め学習した膨大なテキストや画像データの中からプロンプトに関連するものを瞬時に探し出し、組み合わせて自動生成しているので、間違った回答をすることもあります。また、プロンプトの作り方でアウトプットが大きく変わってしまい、意図した成果物ができないこともあります。ただし、驚異的に進化するスピードを見ていると、こうした問題の解決にはそれほど多くの時間はかからないように思われます。

生成AIの種類

生産性を飛躍的に高める夢のビジネスツール

こうした生成AIは、導入するだけで生産性を高められる夢のツールとしてビジネスでの活用も期待されています。とくに文章生成AIは、ビジネスとの相性がよく、メールの下書きから定型的な文章作成、膨大な資料の要約、顧客からの質問に対する想定回答の作成などにおいて活用が始まっています。ただし、帝国データバンクの2023年6月の調査によると、生成AIの業務活用を検討している企業は全体の52%にのぼるものの、実際に活用している企業はまだ9.1%。本格的な導入はこれからといったところです。
一方で、人手不足に悩む地方自治体では、「ChatGPT」を導入する動きが活発で、文書の要約や翻訳、議事録作成、住民向けの情報発信などの業務に活用され始めています。

生成AIの活用状況

電力大手3社が「ChatGPT」などの生成AIを導入

こうした生成AIの業務利用について、電力業界ではどのように受け止めているのでしょうか。大手電力各社では、すでにAIを電力需給計画の作成やエネルギーリソースの制御などに活用していることから、生成AIへの関心も高く、ほぼ全社で導入を検討。そのうち3社ではすでに業務での活用が始まっています。主な用途は、社内資料作成や企画立案、社内マニュアル類の検索などのほか、設備の点検・保守や先進的な発電所運営などへの適用も検討されています。

最も導入が早かった九州電力は、2023年の7月から「ChatGPT」を業務に導入。資料作成などのほか、データ分析、企画の構想、顧客へのインタビュー質問案の作成、プログラムコード生成に利用するとともに、「ChatGPT」をブレインストーミングの相手として活用するなど、幅広い分野で、業務の効率化や品質向上に役立てようとしています。同社では、「まだクリアしなければいけないハードルはあるが、新しい技術を使わないという選択肢はない。人間の暮らしを豊かにする技術は、必ず普及していくものだと思う」と、さらなる活用に意欲をみせています。
また、東京電力ホールディングス(HD)と関西電力は、8月から生成AIの試行運用を開始。東京電力HDでは、文案生成やマニュアル・ガイド類の検索、社内制度の問い合わせ対応などの活用からスタートし、今後はより幅広い業務への導入を検討するといいます。
他の大手電力会社も「ChatGPTなどの生成AIには事務作業を抜本的に変え、大幅に効率化する力がある」と期待を寄せており、「情報漏えいや著作権侵害などのリスクを十分に検討した上で業務適用を開始したい」と、導入への準備を進めています。

また、一歩進んだ生成AIの活用例として、NTT系新電力のエネットは、年々複雑化する電気事業に関する制度改正の内容を、生成AIを使って整理し電力業界に与える影響を分析・評価するための実証実験を開始しています。
近年、電力業界では燃料価格の高騰や再生可能エネルギーの利用加速といった課題も加わって政策や制度の改正が多く、論点も多岐にわたるため、その内容を把握するのが容易ではありません。そこで同社では、生成AIを活用して改正内容を要約し、影響を正確かつ迅速に把握することで自社のビジネスに役立てるとともに、顧客への情報提供にも活用したいとしています。

これまで、人がやらなければならなかったことを、AIが高精度に代行してくれることで、こうした新しいサービスが次々と誕生し、働き方や社会、そして日々の生活も大きく変わっていくことでしょう。

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