令和の台風被害から見る新しい電力マネジメント2022.10.3
日本に自然災害が多いのはなぜ?
日本は、世界でも自然災害が特に多い国として知られています。例えば、地震。日本の国土の広さは全世界の1%にも満たないにも関わらず、世界で起こる地震の2割は日本で発生しています。また、地震に限らず、大型の台風や暴風雨、雪害など様々な種類の自然災害が発生し、その頻度や被害規模は年々増加傾向にあります。なぜ、日本はこれほど多くの災害に見舞われるのでしょうか? それは、そもそも日本には自然災害を受けやすい条件が数多く揃っているからです。
地球の表面はプレートと呼ばれる数十枚の岩盤に覆われて出来ています。日本列島はそのうち4枚ものプレートが接地している場所に位置しています。これほど多くのプレートがせめぎ合う場所は世界でも他に類はありません。これが、日本で地震が多く発生する原因です。
そして、この季節、特に大きな被害をもたらすのが台風です。日本の南東の海上は台風のもととなる熱帯低気圧が発生しやすい場所。これが台風へと発達し、上空の風の流れや8・9月ごろの気圧配置の影響を受け、次々と日本へやってきます。この台風が暴風雨をもたらし、前線の活動を活発化させることで豪雨を降らせます。
また、日本の国土の約7割は山地で占められているため、河川は急勾配で流れも速くなります。そのため、川の氾濫などが起きやすい地形が多いのです。
災害への強靭さで注目を集める
「分散型」地域エネルギーシステムの取り組み
先の一覧にもある、令和元年の台風では約93万戸に及ぶ大規模停電が発生し、千葉県では復旧に2週間以上という長い時間を要しました。現代社会の最も重要なインフラである電力供給の停止は、断水や通信網の途絶にも繋がります。そのような状況で注目を集めたのが、「地域エネルギーシステム」への取り組みです。
広域にわたり停電が続く中、千葉県睦沢町では自前の発電機と地中化した自営線(大手電力会社以外の電気事業者が電力供給のために設置した電線)により、道の駅や近隣住宅への電気と温水の供給を継続しました。また、都市ガスを燃料にガスエンジンで発電、排熱で地下水を加熱し温水利用も可能にしたことで、メディアでも大きく取り上げられました。
例えば太陽光や風力、地熱発電といった再生可能エネルギー、家庭や工場などの熱源機(ボイラーやヒートポンプ、ガスコンネーションシステム等)といった、地域に分散・散在している小規模なエネルギー供給源を総称して「分散型エネルギー」と呼びます。再生可能エネルギーの地産地消が日本各地で増加を見せている現在、この分散型エネルギーのシステム化と有効利用も、未来の電力システムとして注目を集めています。
新たなエネルギー資源「VPP」とは?
そして、エネルギーの地産地消を実現すると言われる重要なキーワードがVPPです。VPPとは「Virtual Power Plant=仮想発電所」という名前が示す通り、企業や自治体などが所有する発電設備や自家用発電設備、蓄電池システムやEV車など、それぞれの地域に分散しているエネルギーリソースを相互に繋げ、IoT技術を活用してコントロールすることで、まるで一つの発電所のように機能させる仕組みです。
近年の日本では多くの災害に伴い、電力需給のひっ迫、計画停電が行われました。それをきっかけに、従来の省エネの強化だけでなく、電力の需給バランスを意識したエネルギー管理を行うことの重要性が改めて見直されました。大規模な発電所のみに依存せず、再生可能エネルギーの有効的な活用方法への取り組みが大きく前進したと言えます。ただ、再生可能エネルギーは天候や自然の状況に応じて発電量が左右されてしまうため、供給量の制御が大きな課題となってきます。この課題解決への動きと並行し、太陽光発電や家庭用燃料電池などのコンジェネレーション、蓄電システム、EVといった形での「分散型エネルギー」の普及と、その活用方法としてVPPに大きな注目が集まっているのです。
VPPでは地域全体の住宅やオフィス、工場などそれぞれに設置された発電システムを結び付け、地域全体でシェアして使用することも可能になります。また、発電して余った電気は足りないところに回され、さらなる余剰電力は蓄電されるなど、地域全体の発電量を分配し、効率よく利用することも出来ます。災害の電力不足時の機能や、再生可能エネルギーのさらなる有効利用など、未来の電力システムの一つとして今後、多いに活躍が期待されています。
地域と暮らしの「万が一」に備える
これからの蓄電システム
ここ数年の間に「数十年に一度」と言われる規模の災害が立て続けに起こっている日本。もはや災害とは、いつ起こってもおかしくないもの、としてきちんと認識し、備える必要があると言えるでしょう。防災グッズなどの常備はもちろん、多くのライフラインを支える「電力」についても、きちんと考えたいものです。
そこでカギとなるのは、やはり蓄電システムです。より多くの家庭での蓄電システムの導入・活用が、各地域のVPP推進に大きな役割を果たします。
経済産業省資源エネルギー省では、令和3年から、蓄電池などの分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業者補助金を実施するなど、分散型エネルギーの具体的な活用と技術の推進を支援しています。
私たちニチコンも、この補助金制度を活用し新たなVPPリソースとなる家庭用蓄電池の販売を行っています。こちらについて詳しくお知りになりたい方は、環境共生イニシアティブのサイトをご確認いただくか、最寄りの蓄電システム販売店様にご相談ください。
また、すでに設置済みの蓄電システムをVPPリソースとして活用する実証実験にも参加しています。この実証実験では、すでに当社の蓄電システムを設置いただいているニチコン オーナーズ倶楽部の登録ユーザー様にもご参加いただけるよう、近々メールマガジンにて募集を行う予定です。地球環境や、日本のエネルギー政策への貢献につながる実証実験に、ぜひご参加ください。