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テスラとエジソン〜天才発明家ライバルの戦い〜2021.11.4

テスラとエジソン

「天才とは99%の努力と1%のインスピレーションから成る」という名言でも知られるトーマス・エジソン。84年の生涯で1,300以上もの発明品を生み出し、1,000を超す特許を取得したという、まさに「発明王」です。

電話や蓄音機、株式小場表示機、映画用撮影機など、エジソンの発明は現代でも生活や文化の基盤になっているものばかり。その中でも、やはり特に有名な発明は「白熱電球」でしょう。エジソンは白熱電球と合わせて「直流」発電機と配電システムなどを確立し、白熱電球による照明を普及させ、1882年(明治15年)にはニューヨークで電灯事業をスタート、大成功をおさめます。
しかし、この時、エジソンに強力なライバルがいたのを、皆さんはご存じでしょうか? しかも、そのライバル、電気技師ニコラ・テスラは「電流戦争」と呼ばれるエジソンとの戦いに勝った人物なのです。

エジソン“直流” VS テスラ“交流”の電力戦争

エジソン“直流” VS テスラ“交流”の電力戦争

当時エジソンが推進していた「直流」方式のメリットは「蓄電が可能であること」「電流が安定しているため、そのまま電化製品に使用可能」という点です。一方、直流には、電圧の変更が難しく、広範囲での電力供給ができない、という大きな課題もありました。
時を同じくして、ニコラ・テスラはオーストリアのグラーツにある工科大学で「回転磁気」の原理を発見します。モーターを駆動する回転磁気を生み出すため「交流」を用いることを考え付いたテスラは、「交流モーター」を完成。これをさらに発展させ、発電機などの関連技術と合わせて体系化することで、テスラ独自の「多層交流システム」を考案します。
「交流式」のメリットは変圧が容易であることでした。テスラはこの「交流式」の実用化を進めようと渡米し、当時すでに電力事業で著名な存在となっていたエジソンのもとで働くことになりました。しかし、交流式を優位とする理論家のテスラと、すでに世界各国で直流による発送電事業を進め、電球も販売していた直流主義者エジソンとの溝は深く、テスラは1年で退社してしまいます。

1893年のシカゴ万国博覧会の電気館

そこへ手を差し延べたのがアメリカの実業家ジョージ・ウェスティングハウス・ジュニアでした。
協力者を得たテスラは発電機、モーター、変圧器、制御装置などの交流電流による電力供給の仕組みをさらに改良。アメリカ電気工学者協会で数々の成果を発表し、世界的な注目を集めるようになります。
交流支持派が増えるにつれ、エジソンは直流電流の優位性を保つために、交流電流は危険だと広めるネガティブ・キャンペーンを展開。この泥沼の戦いは「電流戦争」として数年にわたって続きます。しかし、最終的には、その安全性や効率性を認められ、テスラとウェスティングハウス社は、ナイアガラ水力発電所や、シカゴ万博での受注競争に勝利。交流方式を世界へと広めたのです。

120年を経てより進化したエネルギー社会へ

120年を経てより進化したエネルギー社会へ

私たちが暮らす現代社会も、テスラとエジソンの功績によって支えられています。
例えば、家にある電子機器や家電など、動力源として電気を使う機械はたくさんあります。そして、その殆どが「AC100V」のコンセントに差すことで動作、充電しています。この「AC」とは「交流」を意味し、発電所で発電された電気は「交流」により各家庭へと届けられているのです。
一方、スマートフォンやLED照明、パソコンなどは「直流」電源で動作しています。つまり、家電製品の多くが交流電源を内部で直流電源に変換して動作しているのです。

電流戦争では劣勢だった直流電力は、近年ではその価値が見直されています。
太陽電池や、燃料電池(水素や水素を含むガスから発電を行うエネファーム)などは直流の発電方法で電力を作ります。その電力を交流に変換せず、直流のまま蓄電池やEV電池に蓄えられるニチコンのトライブリッドシステムが注目されているほか、直流のまま使えるエアコンや冷蔵庫などのDC家電なども提案されています。

全国各地でエネルギーの地産地消プロジェクトも話題となる今、地域や環境に応じてより「交流」「直流」の使い方も、より柔軟な発想が求められてくるのではないでしょうか。
「発明の究極の目的とは、自然の力を人類の必要に役立てること」と言ったニコラ・テスラ。私たちニチコンも、より自然と調和した、暮らしに役立つ電力システムをお届けします。

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